■リヴァイアサン大祭2013『Engagement unter dem Leviathan』
満天の星の海をリヴァイアサンが泳いでいる。何に遮られることなく泳ぐその姿は雄大だ。誰もが等しく、差別することなくその姿を見ることができた。
ここにもまたそんなリヴァイアサンの姿を眺める2つの影があった。
互いに寄り添い、手を絡めるように繋ぎながら歩みを進める。見上げるリヴァイアサンの姿に、ダリスが感嘆の吐息混じりに言葉を紡ぐ。
「綺麗だな……今年も2人で見られて良かった」
心からそう思う。2人で一緒にいることも大切なことだ。
「あぁ……今年も、一緒に居られたなダリス」
応じるカルディノの声にもまた同じ響があったのだが、どこか上の空だった。
繋いだ手の温もりは相手のことを意識する。何度もこうしているはずなのに慣れなくて。普段の主人と執事としての姿ではなく、恋人同士としての時間を過ごしていることが照れくさくも嬉しい。
空を見上げるとリヴァイアサンは変わらずそこにいる。また来年も、こうして2人で同じ空を見ているのだろうか。まだ見ぬ未来に思いを馳せる。何気ない会話も、ただこうして2人で過ごすだけの時間もまた愛おしい。
カルディノが物思いに耽ったのを見てダリスは笑みを浮かべた。それは悪戯を企む少年のような、楽しげな表情。
「でも、来年からは…もっと特別な立ち位置で一緒に見てくれないか?」
その言葉と動じにダリスはカルディノの身体を抱き寄せた。物思いに耽っていたカルディノは抵抗する暇もなく、あっさりと抱かれるままだった。
「何を、す……特別な、立ち位置?」
急なことに目を白黒させるカルディノを愛おしそうにダリスは見ている。微笑みは途切れることなく、続く言葉を告げた。
「あぁ…その通りだ……結婚してくれ」
ダリスは微笑を浮かべたまま、取り出していた小さなケースを開いた。そこにあるのは銀色のリング。告げられた言葉とそのリングの意味を正しく理解し、カルディノは泣きそうになる。
でも今は泣くよりも先に告げないといけないことがある。
考えるまでも無く、言わなくてはいけない言葉は分かっている。
「……はい、喜んで」
嬉しくて零れそうな涙をこらえながら、胸に顔を埋める。ちゃんと指輪も後で受け取るから、今はそれよりもこうしていたかった。こうして寄り添い、抱きしめて欲しかった。
何にも平等にリヴァイアサンは雄大で美しい姿を見せる。でも、今ここではこの2人を祝福するように輝きを増したように見えた。
寄り添い、進む2人にこれからも幸せが続くように。