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2人でリヴァイアサン大祭

銀牙狼・アルジェン
ドラゴン懲罰騎士・ジャッジメント

■リヴァイアサン大祭2013『祝祭でも頑張る人へ』

 街も大いに賑わう祝祭に、人々の表情には幸福が満ち溢れていた。
 だがそんな浮かれた雰囲気とは別に、職務に従事する者も中にはいた。ジャッジメントもその一人だ。
 明るい祭りの空気に騒ぎを起こす輩も出て来るだろう。だからこそ、彼は歓楽街から少し離れた薄暗い路地裏で気配を潜め、大通りの様子を警戒していた。
 誰も寄りつかないはずの場所。そこへ、のんびりとした声が掛かった。
「ドラゴン刑事、お疲れ様なのですよ?」
 聞き慣れた通り名で呼ばれたジャッジメントが視線を向けると、そこにいたのはアルジェンだった。
「おや、貴公か」
 隣に並んだアルジェンの瞳は脱力した様子とは裏腹に、周囲や歓楽の様子は油断なく見据えている。それ故に、ジャッジメントも彼を信頼しているのだろう。
「……いや、流石に治安を守るものが羽目を外しては、皆に示しがつかぬのでね」
「改めて感謝します。今年もこういう時期は大変ですからねぇ」
 落ち着き払っているジャッジメントに頷きながら、アルジェンは考えていた。
 自分の領土はまだ静かなものだが、やはり羽目を外しすぎた者は多いように感じていたのだ。決して気を緩めてはいけない。
 そういう意味でジャッジメントの行動はやはり正しく、尊敬もできる。
 だがその反面、少し申し訳ない気持ちもあった。アルジェンは、抱えていた水筒の蓋を開ける。
「未熟ながらご用意させて頂きました。今日は冷えますので、宜しければ」
 彼がカップに注いだのは、ココアだった。ジャッジメントは差し出された湯気が立つカップを口元に運ぶ。
「……生姜入りか」
「温まるかと思いまして」
 ほんのりと香るそれを感じながら、アルジェンもココアを口にする。こくりと飲みこみ、吐き出した息は白い。
「今年も多くの事がありました……」
 辛い事も悲しい事も、沢山。
 でも――。
「ああ……だからこの時ぐらいは、皆で楽しんで貰わないと」 
 そう。だからこそ、この祝祭は笑顔であるべきだ。アルジェンは彼の言葉に頷いた。 
 その為にも、今を頑張らねばならない、そんな想いが懲罰騎士のジャッジメントの中に、そして城塞騎士であるアルジェンの中にもある。
 不意に路地裏に駆けこんできた妖精騎士からの報告を受けているジャッジメントの横顔を見ながら、アルジェンは自然と口元を緩めていた。
 ――誰よりも真っ直ぐに人々の幸福を考えて頑張る彼を眺めて。
「仕事のようだ」
「……ああ、来ましたか」
 短く告げたジャッジメントに、アルジェンはのんびりと返す。
 聞けば、嫉妬に狂った連中が路上でカップルに絡んで暴れ始めたとか。悲しいかな大祭にはよくある事、かもしれない。
「行くとしよう」
「ええ、そうですね」
 休憩に終わりを告げ、駆けだす二人。
 
 彼らの使命はまだ、終わらない。
 ただ今日は、空を舞う星霊リヴァイアサンが彼らを見守っていた。
イラストレーター名:弐壱百