■リヴァイアサン大祭2013『Cheers!』
「「乾杯」」チンッ、と永遠を意味する銀のゴブレットが鳴ると、リューウェンとラヴィスローズは微笑み合う。
「リュー殿の秘密の唄を聴かせて?」
雪薔薇姫の御伽話に心を馳せる少女が瞳を輝かせた。
「……」
柔らかく微笑んだリューウェンは、そっとラヴィスローズを引き寄せる。伏し目がちな表情で言の葉を紡ぎ、最後に耳元にそっとくちづけを落とした。
「……っ」
ラヴィスローズは、くちづけられた耳をバッと手でおさえて、みるみる顔を真っ赤に染め上げる。
(「可愛らしいなぁ……」)
リューウェンは、ちょっとした悪戯に可愛らしい反応を見せてくれる少女を微笑ましく眺めていた。しかし、そんな彼女は自分を睨んでいる。おや? と首を傾げると、
「り、リュー殿……ふいうちなんて、ずるい」
ラヴィスローズが顔を赤くして若干涙目になりながら呟いた。どうやら、照れとパニックが混ざり合って涙目になってしまったらしい。
リューウェンは、そんな可愛らしい少女に、更に笑みを深めて、
「ラヴィスローズ殿の秘密の唄も、お聴かせ頂けるだろうか?」
甘く囁く。先程聴かせた唄の内容よりも更に甘く。
「……っ」
ラヴィスローズが、ぴしりと固まる。
離したくないと思ってしまう、そう言ってくれたリューウェンの言葉。そして紡がれた秘密の唄。
手にした薔薇とラズベリーの――雪薔薇姫の為に誰かが作ったと言われるコーディアルの温かさと香りは、ラヴィスローズの背中を押した。戸惑いながらも、背伸びをしてリーウェンの耳元に唇を寄せる。
本当に小さな、彼にしか聞こえないであろう声で紡がれる、とろけそうなほど甘い秘密の唄。
「……」
その唄をじっと聴いていたリューウェンの顔に、満足そうな、幸せそうな色が添えられた。
唄を紡ぎ終えたラヴィスローズは、リューウェンの耳に、触れたか触れていないかどうか分からないくらい、本当にかすかに、くちづけを贈る。
――お返しじゃ。真っ赤になってそっぽを向いた彼女はそう言っているようで、リューウェルの表情が更に柔らかくなったのは言うまでない。