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2人でリヴァイアサン大祭

天狼の黒魔女・サクヤ
ほんわかマシュマロ・ユリシア

■リヴァイアサン大祭2013『甘味大魔王と大星霊様からの贈り物』

 周囲に、甘いかおりがいっぱいに立ち込めている。
 リヴァイアサン大祭の、昼過ぎの広場。小川に流れるは蜂蜜。それを用い作られた菓子が振る舞われるイベントが、この日のこの時に行われていた。
「サクヤちゃ〜ん、おかわりお願いします〜」
「ああ、少し待ってくれ」
 そして、盛況な会場の中を、サクヤは給仕のアルバイト。民族衣装風の服装に身を包み、盆に様々な甘い菓子を乗せ、あっちこっちを右往左往。
「お待たせ。蜂蜜のシフォンケーキ、蜂蜜シロップ超てんこ盛りだぞ」
「わ〜、ありがとうございます〜」
 客として参加しているユリシアのテーブル上には、すでにホールごと平らげたケーキの、空になった皿が。それらを押しやり、彼女はサクヤが運んできたシフォンケーキにとりかかる。
 その様子を見て、サクヤは呆れるとともに……嬉しそうに食する義理の妹を見て、微笑ましくも思うのだった。
「ん〜、おいしい〜。やっぱり甘いものって、いいですよね〜」
 と言いつつ、グラスに注がれた蜂蜜ジュースも、ぐっと一飲み。他のお客はみな、甘くなった口直しにと水またはお茶を頼むのに、彼女は例外。改めて義妹の、尋常ではない味覚のすさまじさを実感する。
「……はあ、やれやれ。次、持ってくるか?」
「おねがいします〜」
 すぐに、次の菓子を運んだ。
 蜂蜜のいい香りが漂い、その匂いだけでも口の中が甘くなりそうな焼き菓子。が、ただでさえ甘いその焼き菓子に、ユリシアは蜂蜜シロップを瓶ごとふりかけ、甘さに漬け込んで口に運びまくった。

 そしてしばらく。
 巨大蜂蜜プティングの大皿を、丸ごとユリシアのテーブルに運ぶも、彼女の食欲の勢いは止まりそうにない。
 サクヤはこのイベント立案者に対し、心の中で謝っていた。たまたまサクヤとその者が知り合いだったゆえに、このバイトを紹介してもらったのだが。義妹のこの底なし胃袋のおかげで、おそらくは採算の面は悲惨なものとなるだろう。
 が。それは承知。かわいい義妹に、思いっきり食べさせてあげたいと思うのは、姉として当然。姉妹の絆の前には、採算度外視など当然の事……。
 などと思っていたら、プティングの皿は空に。
「ごちそうさまでした。あー、おいしかった〜」
 供される菓子を一通り味わい尽くし、ユリシアは満足げ。
「まったく……いつもの事ながら、スゴイ食欲だな」
「えへへっ。あ、これ……」
 そう言ったユリシアは、サクヤへと袋を。中には大量の通貨が。
「これは?」
「お代です。これから、また別のところに行かなくっちゃあならないですからね〜」
 ほんわかした笑顔を、サクヤに向けるユリシア。
「別?」
「はい。別の場所では、ケーキ食べ放題が行われているそうなんです。ぜひ行ってみたいので」
「…………」
「どうしました?」
「……まあ、がんばれ」
「はい。それじゃあ、行ってきます〜」
 笑顔で向かっていくユリシアを、見守るしかないサクヤであった。
イラストレーター名:Nez