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2人でリヴァイアサン大祭

小夜啼嬢・チェルシー
二律背反・ネルフィリア

■リヴァイアサン大祭2013『Diva et IX ふたりの為のDinner Show』

 今宵はリヴァイアサン大祭。歌姫の屋敷、二人で飾り付けたささやかなフロアを舞台に、一夜限りのディナーショーが開かれる。
「慣れぬ服もたまには着るものですね。機会を与えて下さって感謝致します、チェルシーさん」
 礼を言うネルフィリアに、チェルシーは微笑みを返した。
「ああ、こちらこそ。素敵な紳士とご一緒出来て、光栄至極だ。今宵はようこそ我が邸宅へ」
「失礼。先に述べるべきでした。今宵もお美しい」
 チェルシーの今日の装いはふわりとしたドレスで、ネルフィリアの言葉通り、彼女によく似合っている。
 ネルフィリアに椅子を進めると、チェルシーは華やかな部屋の中、彼の前に立った。
「まずは、いつかの約束を」
 今宵のディナーショー、最初にして最高のメインはチェルシーの美しい歌だ。
(「今宵お招きしたお客様の為に、最上の声で啼いてみせよう」)
 チェルシーは高らかに歌声を響かせる。ネルフィリアは静かに、その声に聴き入った。
「――。素晴らしい」
 やがて歌が終わり、チェルシーがカーテシーをすると、ネルフィリアは惜しみない拍手を彼女に送った。
「これが音の物語、心に響く歌。本当に素晴らしかったです。同居人も珍しく同意しました」
「ご静聴に感謝を、ネルフィリア。貴方の中にいるタンディオンも気に召したのなら幸いに」
「本当に、勿体無いほど……」
 小さな呟きにチェルシーが首を傾げると、いいえ独り言ですとネルフィリアは笑った。
「では食事にしましょう。テーブルメイクの出来はいかがでしょう?」
 ネルフィリアがテーブルに彼女をエスコートする。素敵に整ったそれを見て、チェルシーの頬が緩んだ。
「ありがとう、お上手だ。……しかしグラスが一つ足りないね」
 そう言って、卓上に3つ目のグラスを置いた。もちろん、ネルフィリアの中にいる彼のためだ。
「乾杯の杯へお注ぎ致します」
「貴君に注いで貰った酒はきっと美味だろう。……それでは、乾杯」
 それぞれがグラスを手にし、リン、とグラスが触れ合った。
「美女との会話に心得がないのですが……そうですね……先の歌、その詞に似た話を知っています」
「似た話を?」
 チェルシーは興味深そうに問い返す。
「貴君の声で語られる物語は好もしい。ぜひに聞かせておくれ」
「では語りましょうか」
 酒と料理をゆっくりと楽しみながら、ネルフィリアの語りに耳を傾けるチェルシー。
 しばらく話して、やがてネルフィリアはどこからか贈り物の包みを取り出した。
「私達から礼を。贈物の用意など久しぶりでしたよ」
 差し出されたそれに、チェルシーは目を瞬いたが、嬉しそうに言った。
「礼には及ばぬが、せっかくなので有難く」
「どうぞ」
「………ふふ、光栄だ」
 笑んで、チェルシーはプレゼントを受け取る。
 彼女達は酒を交わしながら、静かで、けれどとても楽しい祝の夜を過ごしたのだった。
イラストレーター名:香