■リヴァイアサン大祭2013『雪の光景』
「わぁ……」エルフヘイムの巨大な樹木に昇ったシルは……そこからの光景に目を奪われていた。
時は夕刻、所は……エルフヘイムの巨木、ないしはその樹上。
シルはクリムとともに、繁らせた巨大な枝の一つに立ち、夕日に彩られた街を見下ろしていた。
きっかけは、シルから。
二人でリヴァイアサン大祭に出かけ、雪のお花畑を見た帰り道。
ふと目に入ったのは、エルフヘイムの大樹。それを見て思いついたのは、あの大きな樹に昇り、その上から景色を見たらどんなに素敵だろう、という事。
シルの思い付きは、すぐに実行された。そして、一緒に大祭を楽しんだクリムも誘い、樹に昇り……。こうして、高い位置の枝にたどり着けた。
「きれいだなぁ、素敵だなぁ……」
風が、木々の枝を吹き抜ける。その風は冷たいけれど、頬に受けると心地よい。
もっとそれを感じたくて、シルは髪を結んでいた紐をほどいた。長い髪が、風になびかれ、風の中に泳ぎ遊ぶ。
風の中に浮かぶ街は、夕日のオレンジ色に染まり、いつもと異なる様相を見せてくれている。いつもの状況、いつもの夕刻の光景にすぎないのに。どうして今日は、こんなに心惹かれるのだろう。
リヴァイアサン大祭だから? それとも……隣に、彼がいるから?
ちらりと、横に立っているクリムへと視線を向ける。彼の端正な横顔が、そこにはあった。
シルと同様に、雪と夕日とが生み出している、幻想的な光景。彼はそれらをじっと……芸術品をつぶさに観察するかのように、感慨深げに眺めていた。
「やっぱり」ひそかに、シルは思う。
やっぱり、夕日の町より素敵だなぁ。クリムさん。
「ん? シル、どうかしたのか?」
その物思いは、見ている事をクリムに気付かれた事で中断した。
「な、なんでもないよ。クリムさん」
「? それならいいけど」
ごまかせただろうか。クリムさんにいきなり話しかけられ、ちょっとドキドキしちゃった。顔が火照っているのを実感する。
そうして、しばらく時間が経ち。
「……そろそろ、降りようか?」と、シルは申し出た。
大樹から降りたシルは、再びクリムとともに地面に立つ。
「綺麗だったね、夕日の中の街!」
「ああ、そうだな。いつもは見られない光景だった」
「……あ、あのっ」
「ん?」
「あのっ……手、つなごうよ? いい、かな?」
夕日の中、クリムに言葉をかけつつ……シルは、手を差し出した。
「……喜んで」
シルのその手を、うやうやしく取るクリム。まるで、恋人同士がするような握り方で、二人は互いの手と手を握りしめる。
シルがぎゅっと手を握ると、しっかりと握り返してくるのを感じ取った。
「……ふふっ」
どちらからともなく、笑いが出て来た。
幸せの笑い、安堵の笑い。そして、楽しげな笑いとが。
夕日は沈み、夜の帳が周囲を包む。
夜空に輝く星々が、まるで二人を見守るかのように瞬いていた。