■リヴァイアサン大祭2013『見上げた星空、伝えあう温もり』
「うわったったった……」これは、丘を歩いていたら転んでしまった時の声。
「うひゃあっ……!」
そして、一緒に丘の斜面に転がってしまった時の声。
キサは、自分と一緒に手をつなぎ歩いていたトウジュとともに、一緒に丘を転がってしまった。
そして……その途中で、夜空を見上げる体勢になって、止まった。
「……ったく、何やってるんや」
嬉しそうに、キサへと笑顔を向けるは、トウジュ。
「すいません……でも、ちょっと得しましたよ」
「得? なんや?」
「ほら……」
寝転んだこの体勢なら……星空がよりきれいに、よりはっきりと……見る事ができる。
「ほら、こうやって見たら……普通に見るより、綺麗ですよ」
「ホンマや……ホンマに、すごい星空やなあ。こうやって寝転んで見ると、すごさも倍増しやな」
「あ、あちらにリヴァイアサンが……」
「おっ、ホンマや!」
まるで、寝転がる事で……星空を見上げるのではなく、星空を見下ろしているかのよう。自分たちが、星空の中に飛び出して……輝く星々の中に入ったかのよう。
ひゅうっ。
いきなり、寒風が二人を襲った。その冷気に当てられ、キサは少し顔をすぼめる。
「トウジュさん、寒くないですか?」
「大丈夫や。このコートのおかげで、めっちゃ暖かいで。おおきにな」
そうだ、彼はキサが送ったコートを着込んでおり、それが寒風から彼を守ってくれている。
「そっちこそ、寒うないんか?」
「大丈夫ですよ……こちらこそ、あたたかいです」
「そっか、そら良かった」
そう。トウジュがキサへと贈ってくれた、手作りのカーディガン。着込んでいるコートとともに、それらがぬくもりを作り出してくれる。
それに何より……今見せてくれている、太陽のような笑顔。そして、しっかりと握ってくれている手。それらが……更なる暖かさを感じさせる。
ぎゅっと握ってくれる手を意識すると、胸の中に湧き上がってくる……大切な人への、愛しい気持ちが。
今年は、決して平穏ではなかった。
戦いの日々に、傷つき、倒れ、つらいと思った事も何度もあった。
心が折れそうになったり、くじけそうになった事もあった。
けれど、それらを乗り越え、こうしてこの日を迎える事ができた。それができたのも、彼のおかげ。トウジュがいてくれたから、できた事。
だから……伝えたい。この感謝の気持ちを。
……手を握ったまま、ゆっくりと身を寄せる。そうされたトウジュは、ちょっとびっくりした様子だったが……すぐに微笑んでくれた。
今年も二人で、こうやってリヴァイアサン大祭の日を迎えられた。そんな感謝の気持ちを、愛する相手に伝わってくれれば……こんなに嬉しい事はない。
(「……何があっても」)
キサは、トウジュに向けて、心の中でそっとつぶやいた。
(「何があっても、私は愛しい、あなたと一緒に……」)
星降る夜。キサとトウジュはそのまま、二人で一緒に、星空を見つめ続けていた。