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2人でリヴァイアサン大祭

祀火の覡・ラグナ
モコモコマスタリー・メイ

■リヴァイアサン大祭2013『蕩ける甘さに誘われて -Honey as sweet day-』

 リヴァイアサン大祭。
 夕刻は、落日ゆえの寂しさが漂う。
 しかし、ラグナがメイと散策しているハニーバザールでは、蜂蜜のような『甘い』雰囲気。人が心地よくなり、楽しくなる空気があたりに漂っていた。
 メイがしっかりと自分の手を握っているのを、ラグナは感じていた。
「はわー、甘い匂い……幸せの匂いだよー」
 そう言いながら、メイは周囲に鼻をひくひく。そしてあっちこっちへと、ラグナを誘い引っ張りまわす。その様子はまるで、甘いもの好きな妹に兄が、あるいは姪に親戚のお兄さんが、あっちこっちに引っ張りまわされているかのよう。
「あたしはじっこから、全部のお店制覇したいぐらいだよー」
 人でにぎわうハニーバザール。そこに並ぶ出店は、色とりどり、匂いも種々雑多。見た事の無いお菓子や甘味も目に入ってくる。
 そんな彼女を見ると、ラグナは気づかされた。
 ……自分がいつしか、微笑ましい笑顔をメイに向けている事を。
「今日は特別な日ですからね。いっそ……」
「ん?」
「いっそ、狙ってみますか? 『全制覇』!」
「え! いいの? ほんとに!?」
「もちろん」
 メイをより幸せ気分にすべく、そんな事を言ってみた。すると……食いついてきた。ものがお菓子なだけに。
 けれど……予想通り。彼女の幸せそうな顔、蜜がとろけそうな顔を見ると、先刻以上にうきうきとして、自分もより心地よくなる。
「それじゃあ、いっくよー! 最初は……」
 メイは最初の出店へと、ラグナを引っ張る。彼女に引かれ、ラグナはその店の前へと赴いた。
 
「ね、ね。ラグナくんは、片手でどのぐらい持てる?」
 いくつかの店を制覇し、その口に多くのお菓子を運んで味わったメイが、問いかけてきた。
 にっこりとイイ笑顔を浮かべ、なにかをおねだりするかのように上目づかいで覗きこんでくる。
「明日のあたしが、食べたいんだってさー♪」
 と指し示すは、蜂蜜の店。瓶詰にした蜂蜜のみならず、蜂蜜から作った飴や菓子なども、甘い香りと共に陳列されている。
 やれやれ、荷物持ちですか。けれど……、
「メイの望むがままに。持って見せますよ」
 バランス感覚を総動員しなければならないだろうが、大切な人の愛らしいお願い。やり遂げなくてどうする? それに……自分も人並み以上に甘味は好き。ゆえに、この言葉も、半ば本気。
「ありがとー! さすがはラグナくん!」
 笑顔を浮かべたメイの顔を見て、ラグナは満足感と、幸せな気分を改めて実感する。
 そう、大好きな人……大切なメイのせいだと、ラグナは悟った。メイが幸せだから……自分も更に幸せになれるのだ、と。
「……さあ、メイ。まだまだお菓子のお店はいっぱいありますよ」
 行きましょうと、大量の蜂蜜のお土産と共に、今度はラグナがメイを引っ張っていく。
 甘くて愉快なバザールは、まだまだこれから。メイの笑顔もこれから。
 彼女をもっと笑顔にすべく、ラグナはバザールの中を再び進み始めた。
イラストレーター名:アズミノナツ