■リヴァイアサン大祭2013『二人だけの秘密の時間』
茜色の空から真っ白な雪がふわふわと舞い降る。地面には降り積もった雪で白い絨毯が広がっていた。「寒くないか?」
リグルスは隣に座る――長いマフラーを一緒に巻いて繋がっているアーズィの手を握る。
「あ……いや、うん……大丈夫だよ……」
急に手を握られたアーズィは、びくっと一瞬驚き、うっすら頬が染まる。
「……マフラーも温かいし……」
視線を逸らして、リグルスにも聞こえるか聞こえないかの小さな声で続けた。そっと首を包むマフラーに触れながら。
「そうか……俺は少し寒いな」
軽く苦笑したリグルスは、ぎゅっと握る手に少し力を加える。握ったアーズィの手は冷たく、それが彼の強がりであるのが分かるから。
アーズィは、握られた手の温かさに、ほっと心まで温まる思いだった。しかし、こうして直接触れ合う事に慣れておらず、どうしていいのか戸惑い、視線は逸らしたまま。
普段は余裕な笑みを絶やさない彼のこんな照れた表情を見られ、リグルスの表情は緩む。緩みつつも、その頬が赤くなっているのは寒さだけではないだろう。
日暮れ間近で人気のない公園だからできる触れ合い。明らかに恥ずかしがっているアーズィは勿論、リグルスだって慣れていないのだ。
「このマフラーのお陰で、少しは温かいけど」
先程のアーズィの呟きが聞こえていたのか、やはり聞こえていなかったのか、小さく付け加えたリグルスはそっとマフラーに触れる。
その言葉が耳に入ったアーズィの頬は更に赤みを強めた。
「……あ、ほら、リヴァイアサンだよ」
気恥ずかしさに泳がせたアーズィの視線に、茜色の空を悠然と泳ぐ星霊リヴァイアサンが映る。照れを誤魔化すように口を開いたのだが、その美しさに惹き込まれていた。
「あぁ……綺麗だな」
リグルスも空を見上げて、その姿に見惚れる。
照れや恥ずかしさでぎこちなかった2人の周りの空気は、感動に包まれた。
「来年も、また一緒に見たいな」
「……うん」
リグルスが微笑みながら力強くアーズィの手を握りこむと、アーズィもぎゅっと握り返した。