■リヴァイアサン大祭2013『平穏な夜』
「外、寒かったわね」家の中に入ると、軽く肩や髪の雪を払うユイ。
「綺麗だけど、やっぱり雪降って寒いわよね」
パトゥーシャも同じように肩や髪の雪を払った。
「あったかいもの飲んであったまりましょう」
ユイは微笑みながらキッチンへ消える。
今年のリヴァイアサン大祭は、二人で色々遊んで楽しんだ後は部屋に戻ってお泊り会なのだ。
少ししてユイが、トレイに湯気の立つ温かそうなマグカップを2つ乗せて戻ってくる。
「パティも20歳を超えてたのだものね、大丈夫よね」
軽くウィンクをしながらマグカップを1つ手渡した。
「えぇ」
(「お酒は初めて飲むけど……ユイさんといっしょなら安心よね」)
湯気と共に立ち上るワインの香り。ほんのりスパイスの香りも混ざり、とても温かくて美味しそう。
パトゥーシャは思い切って一口飲んでみた。
「わぁ……あったかくて美味しい……」
口に広がる初めて飲むワインの味に瞳を輝かせる。そのまま再びホットワインを喉に流し込み、体に熱を広げた。
「ふふ……気に入ってもらえたのなら良かったわ」
満足そうに微笑むユイもマグカップに口を付ける。
その時――、
「うん、美味しい〜……ユイさん大好き〜♪」
パトゥーシャはユイに抱きついた。まるで、彼女が眠い時のような、ぽやん、としたオーラに包まれて。
「……って、あらら、酔っ払っちゃった? 顔、赤いわよ」
ユイは小さく苦笑しながらパトゥーシャを受け止め、
「ええ、私も大好きよ。一日でも長く、傍に居てね」
持っていたマグカップをそっとテーブルに置く。そして、その空いた手で頭を優しく撫でた。
「えへへ〜……ずっとですよぉ?」
パトゥーシャは嬉しそうに、ふにゃっと笑う。
(「そう言っても、明日の朝には忘れてしまうかしら?」)
ユイは、そんな事を考えつつ内心苦笑するも、そっとパトゥーシャの手からもマグカップを取って、再び優しく撫でた。
パトゥーシャは、マグカップが無くなって両手が自由になると、ユイをぎゅーっと抱きしめる。そのまま、まるで猫のように、ユイの肩に頬をすりすりと擦り付けた。
(「こんな穏やかに幸せな日々は、きっと小さな奇跡の積み重ね」)
ユイは、パトゥーシャの頭を優しく撫でながら、ふと幸せそうに顔を緩める。
(「いつまでも一緒に居たいなんて我侭は言わない」)
「出来る限り長く一緒に居られますよう……」
小さく呟いた。祈りを込めて――。