■リヴァイアサン大祭2013『Lavoro bilaterale』
雪の舞い散る庭に、キウの笑い声が響き渡る。「こんな感じ? もっと上かしら?」
今日はリヴァイアサン大祭。巨大な水の上位星霊リヴァイアサンが空を舞い、白い雪に包まれたエルフヘイムのあちこちから楽しげな笑い声が聞こえてくる。
そんな日だからキウの心は、自然と弾む。長い黒髪に雪片をたくさんくっ付けて、青い瞳を輝かせる。庭に立てた大きなツリーを、リボンやモールできれいに飾りつけるのが楽しくて仕方がなかった。
けれどもキウの心を何より浮き立たせるものは他にある。
「そんな感じで良いんじゃないか?」
キウの問い掛けに答えたのは、ウセルだ。大きなツリーを飾りつけるキウの手が高いところに届くように、しっかりと抱きかかえている。
こうやって二人で作業するのも、リヴァイアサン大祭の醍醐味だ。何しろ今日は、大切な人同士が絆を確かめ合う特別な日なのだから。
ウセルは、キウが落ちてけがをしないように、寒さで風邪をひかないように、その腕でしっかりと、優しく包み込んでいる。その精悍な顔立ちには、笑みが浮かんでいた。
「だめ、やっぱりもっと上に飾りつけなくちゃ!」
けれども大人しげな見た目に反してお転婆で元気いっぱいのキウを支えるのは、気が抜けない。突然、ぐっと身体を伸ばして高い所に手を伸ばすものだから、ウセルは慌てた。
「こ、こら、急に動くな……」
ウセルは両脚を踏ん張って、バランスを取る。
それほど揺れなかったが、キウは反射的にウセルの首に腕を回した。ウセルの青い瞳が間近に迫って、吐息が肌をかすめていった。
唇が触れ合いそうな距離で、見つめ合う。
はらはらと雪が舞い散る中で、わずかな間、時が止まったように感じられた。
「危ないだろ」
キウを叱るウセルの声は優しい。
だから、キウも笑顔のままでいられる。
舌をちょこんと出して、ちゃめっけたっぷりに答える。
「ごめんなさい」
くすくす笑いを交わし合って、仕切り直し。キウは手元のカゴから、リヴァイアサンを模した白いモールを取り出して、ウセルの助けを借りながらツリーにくるくると巻いていく。こんなふうにツリーを飾りつけるのは楽しいし、リヴァイアサン大祭でにぎわうエルフヘイムも活気に満ちて心が浮き立つ。
だけど何よりもすてきなのは、こうしてウセルと同じ時間を過ごせること。
ウセルがいなければ、たぶん、こんなふうに心は弾まない。
楽しい会話も、冬の共同作業も、一人きりではできないから。
(「来年も、またその次も、こうして一緒に出来たらいいなあ」)
心の底からキウは願った。
ウセルの身体に腕を回すと、彼が笑った。同じようにウセルもキウの身体をぎゅっと抱きしめてくれる。だから、キウも笑った。
雪の積もる庭の中、笑い声がこだまする。
そんな二人の前には、きれいに飾り付けられたツリーが輝いていた。