■リヴァイアサン大祭2013『黄昏の花嫁』
空が優しいオレンジ色に染まった夕暮れ時。年末になると店も閉まるから、と街に買い物に出掛けたセレストとティマは、買ったものを持って帰り道を歩いていた。
食料や日用品など必要なものを色々買ったので、荷物は両手にいっぱいだ。勿論、重い荷物はセレストが引き受けて歩く。
「……とても綺麗なお嫁さんだったのです」
ふと、ティマが呟くように言った。
「花嫁さん……ああ、さっきの」
街の教会で見かけた結婚式を思い出して、セレストも頷いた。
「うん、綺麗だったね。ティマもあんな感じの式が良い?」
「えっ!? あ、あんな豪華なお式はわたしには」
突然のセレストの言葉に、ティマは真っ赤になって首を振る。
セレストは気にせずに続けた。
「ウェディングドレス姿のティマは、きっと綺麗だろうな」
「え、あー……は、はう」
しかしティマは、自信のなさそうな声を出して俯いた。
「ドレスに負けないように、もっと綺麗に大人っぽくなりたいのです〜……」
セレストはそれを聞いて、苦笑交じりの溜息を1つ零す。
そしてティマの持つ籠へと手を伸ばし、中から先程買ってきた白レースの薄布を取り出した。
セレストはそれを、まるでヴェールのようにティマの頭へ柔らかく被せる。彼女の髪をふわりと包む、白いレース。
「ほら、着飾らなくてもティマが一番綺麗だ」
レースをかけてもらったティマは、頬をますます赤くして顔を上げた。
「も、もう……いつもそうやって、不意打ちなのですよ。……でも、嬉しいのです」
ティマの返事に、セレストは笑みを深めた。
「セレスがそうやって、ありのままが良いって言ってくれるから……わたしも好きになっていけるのですよ」
「……自分を?」
ティマの金の瞳を覗き込み、セレストは訊ねる。
「……自分と……セレスをなのですよ」
はにかみながらも、笑顔で答えるティマ。
そうして返してくれる微笑みは可愛らしくて、優しくて。何よりも貴くて綺麗だ、とセレストは思う。
「──絶対に、護るよ」
セレストは言った。
「キミを、幸せを。そして、キミと過ごすこの時間を」
大切な人と共に過ごす時間が、そして互いのことがとても愛しい。
黄昏の空の下で手を取り合い、2人は微笑み合った。