■リヴァイアサン大祭2014『生きていると、終わらないと、ただ信じたい』
リヴァイアサン大祭。その言葉が何を意味するか、知らないエルフなどいるはずがない。いつも夜を共に過ごしているヴィルヘルムとロスヴィータの2人にとっても、今宵は特別な夜だ。「ねえ、ヴィル……」
「うん?」
寄り添いながら彼の名を呼ぶロスヴィータ。その声がか細く震えているのに気付き、ヴィルヘルムは「どうしたんだい、ヴィー」と優しく語りかけながら、そっと彼女に触れる。
「……ずっと一緒にいてね」
不安な気持ちをこらえるように、ロスヴィータは搾り出す。エンドブレイカーとして激しい戦いを繰り広げ、戦場は滅びの大地――あの大魔女の本拠地へと移ろうとしている。
当然、戦いは更に苛烈なものとなるだろう。
これまでのような日々は、もう得られないのかもしれない。その不安から、ロスヴィータはヴィルヘルムに縋るように抱きついた。
「勿論」
ヴィルヘルムにとって、ロスヴィータは誰よりも、何よりも大切な相手だ。これまでのヴィルヘルムの人生には無かった、唯一無二の特別な存在だからこそ、彼女の不安を少しでも和らげてあげたくて……そっと両の指先で、彼女を優しく撫でていく。
髪を、頬を、唇を。首を、肩を――そのままロスヴィータを強く抱きしめる。
これからも、もっと一緒にいたい。
ずっと一緒に生きていきたい。
来年も、再来年も、10年先だって2人で……更にもっと多くの、たくさんの未来を見据えながら――歩んで、生きたい。
その気持ちは、ヴィルヘルムもロスヴィータも同じだ。互いにとって、かけがえのない大切な存在だからこそ失うのが怖くて、失いたくなくて。
相手が確かに、そこにいると確かめるように、強く、強く強く、抱擁を交わす。
「2人一緒なら、大丈夫だよね」
「ああ、そうだね」
何かあっても2人でなら乗り越えられる。どんな戦いだって生き残って――その先へ。
きっと行けるに違いない。いや、行ってみせると、2人は微笑みを交わす。その瞳はどちらも強い光が宿っていた。
「ヴィー、おいで」
優しく微笑むヴィルヘルムに頷いて、ロスヴィータは潤んだ瞳で更に彼の元へと身を寄せる。
指先を絡め合い、互いの吐息と体温を感じながら、リヴァイアサンの夜は深く、深く、2人の中へと刻まれていった――。