■リヴァイアサン大祭2014『この幸せをいつまでも一緒に』
後悔した。己の不甲斐なさ故に、戦で生死の境を彷徨ってしまった。それ以上に、大切な人と離れ離れになってしまった事に。大切なお嬢様――そして、最愛の恋人と離れている間どれだけ生きた心地がしなかった事か。
去年のこの日、傷も癒さぬままルサリエの元に戻る事ができた。戻って『時の玉座』に座ろうと思う、そう宣言。
人間の自分とエルフの彼女では年の取り方が違う。だから『時の玉座』の力で彼女と同じ時の流れを手にすると。
それから1年ずっと共に過ごした。
しかし、エンドブレイカーの戦も激化する中、今後同じ事が起きないとも限らない。何時になるか分からない戦の終焉を待たずにこの想いを形に――。
ずっと怖かった。『戒律』健在時に無かった幸せと、幸せが続かない未来への不安。
幸せが続かない――何よりも大切なセシリーがいなかった時の不安がルサリエの心に大きく影を落とす。
人間とは年の取り方も違う。例えセシリーの身に去年のような事が起こらずとも、置いていかれてしまうと。
『時の玉座に座ろうと思うんです』
彼がそう言ってくれた事がどれほど嬉しかったか。同じ時の流れになってくれる事がどれだけ不安を取り除いてくれたか。
そして彼の言葉が何よりも嬉しくて。だから、反対する一族郎党を説得するのに奔走した。
この日のために――。
「では、誓いのくちづけを」
そう2人の絆を永遠にする厳かな言葉が響く。
その言葉で、セシリーはルサリエの顔を覆うヴェールを持ち上げ、その顔を真っ直ぐ見つめた。
幸せに怯えていたルサリエが、本当に幸せそうに瞳を潤ませている顔が、セシリーの瞳に映る。
「ルサリエ、愛しています」
「わたくしも……セシリーを……愛していますわ……」
ルサリエが瞳を閉じると、今にも零れそうだった涙は目尻から一筋の光る筋を描いた。
柔らかなセシリーの唇が重なる。誓いの固い意志と共に。
この幸せをいつまでも一緒に――。