■リヴァイアサン大祭2014『adoucir』
――皆で楽しむ昼が終わった後は、夜は2人でリヴァイアサンを眺めよう!そう考えて、エルフヘイム樹上にあるロッジを借り、ロネとカルロは張り切ってそこへ赴いた。
持ち込んだお菓子やドリンクは2人で消費しきれるかも怪しいほどたくさんで、その上奮発してデリバリーも頼んでいる。外のバルコニーに出るのはそれらの整理を終えてからと思っていた2人だったが、辺りはすっかり暗く、外の様子が気になって仕方がないためろくに整理もせずに外へ出ることにした。
「行きましょうっ!」
シャンパンとグラスだけを持ってロネははしゃいだ様子で外に出て、カルロが後に続く。
――カンテラの柔らかい明かりが、雪景色を照らしだす。
美しさに、2人は思わず息を呑んでしまった。
「――」
美しさのあまりに言葉を失うロネの横顔を見つめるうち、カルロの胸には喜びがじわりと広がる。
大祭を2人で過ごすのも、二十歳を迎えたばかりのロネとシャンパンでの乾杯をするのも今日が始めてのこと――沈黙の中、カルロは口元に優しい笑みを浮かべて乾杯の用意をした。
「おめでとう」
「乾杯」
シャンパンで満たしたグラスを掲げ、声を重ねる2人。
グラスの中身を飲んで、ロネは空を舞うリヴァイアサンを見上げた。頬が赤いのは、寒さと嬉しさのためだった。
「――ロネ」
喜ぶロネを見るのは嬉しかったが、ロネの視線を独占するリヴァイアサンが少し妬ましくなって、視線を奪うようにカルロは呼ぶ。
「僕、ロネのこと好きだよ」
どうしたの、とカルロに目を向けたロネも、その言葉に気持ちがあふれたように言葉を漏らす。
「わたしも、カルロさんのことが大好きです、よ」
自分の頬が熱くなるのをロネは感じた。恥ずかしさに顔を隠したくなったが、こらえてカルロに微笑みを見せる。
「冷えてきたね」
赤らんだロネの顔にカルロの手が伸びる。ロネの頬に手を、頭に頬を触れさせて、今度こそ2人は空を見上げた。
――リヴァイアサン舞う夜は、甘く柔らかく過ぎていく。