■リヴァイアサン大祭2014『*lumiere irisee*』
パンペリシュカを抱きかかえ、アサノアは大樹の上の太枝までスカイラン。太枝に辿り着いたアサノアはパンペリシュカを離し、毛布を取り出してくるまった。
「ふふ、暖かい、ね」
アサノアの取り出した毛布に一緒にくるまって、パンペリシュカは微笑む。お喋りのお供にと用意していた蜂蜜入りのホットミルクをアサノアに差し出してから、パンペリシュカも口にする。
ホットミルクは片手に、アサノアはもう片方の手でパンペリシュカの手を握る。蕩けるようなパンペリシュカの笑みを見つめていると、アサノアの心には温かな火がともる。
雪が降って冷えた外気も、大好きなアサノアと毛布の中にいれば寒くはない――でも、高いところは少しだけ怖いから、とパンペリシュカはアサノアの手を握り締めた。
「綺麗だ、ね。去年は見れなかったから、今年は見れて、良かった」
囁くようなパンペリシュカの声。綺麗だね、と言葉を返し、アサノアはパンペリシュカに身を寄せる。
高所からのとびきりの景色を見せること、高いところが怖くないようにパンペリシュカの手を握ってあげること。――いずれも大切な、二人の交わした約束だった。
「俺も、君と一緒に見られて良かった」
パンペリシュカの顔には、花が綻ぶような微笑みがある。笑んだ形の唇が、言葉を紡ぐ。
「アサノアくん、大好き」
見つめれば見つめただけ返ってくるパンペリシュカの微笑みに少しばかりの照れくささを覚えたにアサノアは目を伏せて、思わず照れ笑いをした。
「俺も。――シュカが、だいすき」
眼下には夜景。その夜景のように優しくて、暖かくて、きらめいている、宝物のようなひと――それが、アサノアにとってのパンペリシュカだった。
「いつも、有難う」
言いながらパンペリシュカはアサノアの額に額を合わせる。アサノアと出会い、過ごしてきたパンペリシュカの日々はきらめいている。そんな日々をずっとこれからも、と思いながら、パンペリシュカは続けた。
「来年もまた、一緒に過ごしたい、な」
「一緒、だよ」
愛しいパンペリシュカの頬に触れ、アサノアは目一杯の笑みを返す。
来年も、再来年も、これからもずっと。
ずっと君と一緒にいられるようにと、願いを籠めて。