■リヴァイアサン大祭2014『* 雪うさぎに願いを込めて *』
夜の雪原にて――。「アモン先生、見てみてっ!」
2人で作り上げた二匹の雪うさぎに視線をやって、シシィは嬉しそうに笑みをこぼした。
雪うさぎはシシィの両手の上。アモンはシシィの手元に自身の手を添えて、雪うさぎと、雪うさぎを眺めるシシィを見つめていた。
「えへへー♪ こうやって二人一緒だと寂しくないもんね」
シシィの掌の上で寄り添う雪うさぎを見て、シシィは言う。
一人ぼっちは寂しいから――2人で一つの雪うさぎを作るのではなく、1人一つ、2人で二つの雪うさぎを作ったのも、そんなシシィの思いによるところだった。
雪うさぎに目を落とすシシィの顔を上から見つめていたアモンだったが、不意にシシィは視線を上にやった。
「……」
僅かな沈黙。アモンが問いかけるより早く、シシィは先ほどのはしゃいだ声よりも小さな声で言う。
「ボクたちも、この子たちみたいにずっと一緒にいられるといい、ね……」
探るような、不安げな声。ピンク色の愛らしい瞳はそろっと伺うようにアモンを見つめ、アモンがどう思っているかを探していた。
先ほどまで嬉しそうに笑っていたかと思えば、突然こうやって心配そうな顔もする――くるくると変わるシシィの表情はアモンにとっては愛らしいものだった。
――でも、出来ることなら笑っていて欲しい。
思って、アモンはシシィの頭を撫で、安心させるように微笑みかける。
「そうだね。とりあえず、来年もまた一緒に大祭を祝おうか」
来年もまた一緒――その言葉に、不安げだったシシィはほにゃっと嬉しそうな微笑みを浮かべた。
「わーい♪ 約束なんだよーっ!」
雪うさぎを手にしたまま、シシィは雪景色の中を歩き始める。
舞う雪はその結晶の形もしっかりと残したまま、2人の体に降り注いでいた。
アモンはシシィの手を取り、一面の銀世界の上を歩き始める。
――来年もまた一緒にリヴァイアサン大祭を祝おう。
その約束の温かさを、胸に感じながら。