■リヴァイアサン大祭2014『幻想雪華』
時折舞踏のステップを踏みながら、キリィは歩みを進める。キリィの流麗な動きに合わせて彼女の纏う純白のロングドレスの裾も揺れる。肩やデコルテの露出したドレスと同じくらい、キリィの肌や髪も美しかった。
キリィの隣を一歩だけ後ろに下がって歩くのは、キリィのガーディアンであり先日結婚した夫でもあるキース。
キースもコートやその下のタートルネック、ズボンなどの衣服は彼の宵闇色の髪によく映える白で統一しており、青いティアドロップ型のピアスと首元の桔梗をモチーフとしたペンダントがアクセントとなっていた。
「大祭、楽しかったね」
他愛のない言葉を紡ぎながらキリィは歩む。キースもスカードであり護るべき妻でもあるキリィを見守るように見つめながら、頷いた。
大樹の前に辿りついて、キリィはステップを踏む。と――、
「くしゅんっ……」
夜の冷え込みにか、思わずくしゃみが出た。
「ん……なんでもない」
「あまりはしゃぐと危ないよ」
はにかみながら顔だけでキースに振り返ってキリィは答えたが、キースから返ってきたのはそんな言葉と苦笑。キースはキリィとの距離を詰め、キリィの白い肩に自身のコートを掛けてやった。
「……ありがとう」
キースの瞳を見上げ、キリィは言う。キースも微笑み、キリィの月光色の瞳を見つめ返した。
「……瞳は憂いを含んで……でも澄んでいて。綺麗……私の大事な人……」
囁くような声がキリィの唇からこぼれる。その声に、キースは愛情だけでないキリィへの思慕を募らせた。
雪華の麗人であるキリィ。彼女を自分のものとしていることに少し迷いを覚えるキースだったが、それはキースに与えられた権利。キースはキリィを後ろから抱き寄せ、唇にキスをした。
魅惑的な瞳を閉じ、キリィはそれを受け入れる。触れている体温の愛しさにキースが腕の力を強めれば、ぬくもりが互いに伝わった。
――唇は熱っぽく、その温度にキリィは目眩がしそうだった。