■リヴァイアサン大祭2014『今、届く距離』
純白の雪が降り注ぐリヴァイアサン大祭の日。それぞれが、思い思いの時間を過ごしていく。
家族と過ごすのもいいだろう。友達とも悪くない。恋人というのもいい。
それぞれにはそれぞれの楽しい時間があるのだから。
そして、この2人は少しだけ変わった関係で歩いてた。
クリストファーとコーデリアは2人きりで道を歩いているのだが、コーデリアがどこか落ち着かない様子で一歩後ろを進んでいる。
手をクリストファーの方に伸ばしたと思えば引っ込めて、その度に頬を染める朱が増しているようにも見えた。
見る人間がいれば微笑ましさを感じたことだろう。一歩引いてみれば、彼女は彼と手を繋ぎたいのだと察することができる。
そんなコーデリアの葛藤を知らぬままにクリストファーは両の手をコートのポケットへと突っ込んでいる。僅かに後ろを見ればそんなコーデリアに気づけるのだが、その視線は近くの酒場に注がれて。
「こんな日には火酒でも飲みたいな、と」
ふらりと歩みがそちらに向けば今日の酒を探し出す。
コーデリアはその姿に、こんな日でもこの熊は意地悪だと唇を尖らせる。
「クリスの脳みそはお酒に浸かってるのね」
だなんてわざとらしく一言呟いてみたりして。それでもクリストファーは特に気にせず、いつものことだとさらりと流してくる。
だからだろうか。少し、勇気をだそうと思った。隣に並べないのならと手を伸ばす。
ふとした引かれる感覚にクリストファーは視線を戻す。そこには自身のコートに伸びる小さな手と、不満顔のコーデリア。
思わずクリストファーの顔が笑みに歪む。まるで迷子の子供のようだと、感じてついつい鼻で笑ってしまいもした。それにコーデリアはより不満そうな顔になってしまう。
でもそれは分かってくれないからではなく、分かってくれているからでもあるのだが。
クリストファーは自然と歩む速度をコーデリアへと合わせている。そうすれば2人の歩みは揃い隣同士進んでいくことになる。
この熊は意地悪だとコーデリアは思う。上気する頬を隠すように下を向いて、それを自覚すればまたどうしていいか分からなくなってくるのだ。
そんなコーデリアの姿を見てクリストファーはこんな日があってもいいと感じる。
白く染まった世界の中に、2人の足跡が刻まれていく。決して離れることなく寄り添う足跡は、これから進む先そのものを示しているかのように。