■リヴァイアサン大祭2014『大切な君と温もり』
「おい、俺様と散歩するぞ」唐突に、ガゼルにそう言われ……シュトラールは強引に外へと引っ張られた。
「?」
きょとんとした顔をしてしまうシュトラールではあったが……すぐに笑顔に。
だって、ガゼルの事が好きだから。大好きだから……一緒に居たいなと思っている。
だから、お散歩に誘われても断る理由などない。
外の空気は冷たく、風は寒い。
薄曇りの空を見上げたシュトラールは……。
「わぁ、きれいなの」
天空から、雪がちらちらと降り始めるのを見た。
「ガゼル、雪なの。とってもきれいなのよ」
「あ、ああ。そうだな」
ぶっきらぼうに、ガゼルは自分の首に巻いた長いマフラーの端を、シュトラールの首へと巻いた。
「寒くねぇか?」
「うん、マフラーが暖かいから大丈夫なの」
その心遣いが嬉しくて、思わずガゼルへと微笑んだ。
ガゼルはそれを聞き、ぶっきらぼうな口調とともに顔をそむける。
「……それなら、いい」
だが、顔をそむけた時。彼の顔が真っ赤だったのをシュトラールは見ていた。
雪が降る中、マフラーでつながった二人は……しばらく歩き続ける。
さっき、マフラーを巻かれた時からずっと。ガゼルは自分を見てくれない。シュトラールはなんとなく……そんなガゼルを見て、彼が照れてるように思えた。
逆に、シュトラールはガゼルをじっと見つめ続けている。
じーっと視線を送り続けていると。
「…………」
ガゼルは、立ち止まった。
それにつられるように、シュトラールも立ち止まる。
「ガゼル、どうかしたなの?」
「……シュティ。あ、あのな……」
「?」
言いよどみ、言葉が出ない。
「あのな……俺……その……」
言葉が、続いてこない。出てこない。
でも、そんな彼を見ていると……シュトラールもまた、胸が熱くなる。胸の奥から、何かがこみ上げてくる。
(「大事な事……告げるの」)
声に出さず、決意し……。
「……ガゼル」
気が付いたら、彼へと声をかけていた。
不意を突かれたような顔をしたガゼルへと、シュトラールは……。
「……ガゼル、大好きなのよ」
笑顔を浮かべて、はっきりと告げた。
「……お、俺だって大好きだ!」
そして、ガゼルがこちらを向き、そう答えるのも見た。
「あ……」
「え……」
ガゼルが、照れるような、嬉しいような、そんな笑顔を向けてくる。その顔は、先刻よりも真っ赤に。
そしてシュトラールも、自分の頬が熱く火照っているのを感じていた。
「さ、寒いだろ。行くぞ、シュティ」
少しの沈黙の後。ガゼルは強引にシュトラールの手を握り、歩き出す。
その握られた手が、暖かい。
寒風はいまだ吹きすさび、空も寒々しい色。
けど、シュトラールの身体は、熱かった。暖かかった。
ガゼルが握った手から、更なる暖かさが伝わってくる、送り込まれてくる。
(「大好き、なのよ……」)
握った手から感じる愛しさに、シュトラールは心の中で、同じ言葉をつぶやいていた。