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2人でリヴァイアサン大祭

黒猫の円舞曲・レンリ
五線譜に舞う八咫烏・クロウ

■リヴァイアサン大祭2014『永久の約束』

 次に公演する演劇で女役が足りないから――レンリがクロウから受けた説明はそんなものだった。
 クロウにそう言われ、レンリはその演劇での女役を充てられることとなったのだ。
 その演劇では結婚シーンがあるらしい。その結婚シーンのためにとレンリはウェディングドレスを着用し、練習場所の舞台に上がった。
 ……そのはずだった。

「……ここは、結婚式場ですよね?」
 舞台、と思っていた場所はどう見ても結婚式場で。
 おまけに、目の前には笑顔でレンリに手を差し伸べるクロウの姿があった。
 クロウも服装は正装。ウェディングドレス姿のレンリと並べば、2人は新郎新婦にしか見えなかった。
 ――騙された。
 思って、レンリは苦笑する。いつも物静かなクロウだというのに、どうしてレンリの――クロウ自身のマスターのこととなると、こうも空回りするほどの情熱を伝えてくれるのだろうと思ってだった。
「似合ってるよ」
 騙されたと思っても、クロウの想いはレンリにとっては決して不快なものではなかった。クロウのこの行動が、レンリへの愛情の為だと知っているからだった――それに。
 レンリも、クロウのことを愛していた。
「仕方ないですね」
 諦めた風に言って、レンリはクロウの腕に手を回す。ご丁寧に指輪まで着けたクロウの腕を取り、2人は外へと出た。
 クロウはレンリを騙し、強引な形で式を執った。レンリは諦めたように言いながらも、内心に喜びを感じていた。
 寄り添って、2人は外を歩く。
 外の空気は冷たいが、その分だけ透き通っていた。空は青く、浮かんだ雲も優しげに思える。雲を小さくちぎったような雪が舞い降り、2人を祝福するようだった。
 肩の出たウェディングドレスだと外は寒い。レンリはそっとクロウの身体に身を寄せて、自分よりも背の高いクロウを見上げた。
 ――こうして、互いの隣を歩めることに感謝しながら。
 2人の顔には、喜びを込めた微笑みが浮かんでいた。
イラストレーター名:MAO..AZ.