■リヴァイアサン大祭2014『二人でミサンガに込めた願い事。一緒に叶いますように』
「メリーリヴァイアサン!」そわそわしていたシンシアの背後から声が聞こえ、振り返る。
「メリーリヴァイアサンです♪」
声の主は、ずっと待ちわびていた――タリスカーだった。だから、とびきりの笑顔で口を開く。
「やぁ、シンシア……どうだい? 夜も更けてリヴァイサンは一層綺麗に見えてるかな?」
タリスカーは、ゆっくりシンシアの傍へ近付き、微笑んだ。
「はい♪ ずっと見てましたけど、今が一番綺麗に見えます♪」
夜も深まって、澄んだ空気がより一層リヴァイアサンを鮮明に、ずっと近くに見せてくれる。
「やっぱり今日だけはこれを見に来ないとな……でも『ずっと』って寒かっただろう?」
タリスカーは夜空を見上げて、ふいにシンシアに視線を下ろした。
「いえ、別に寒くは……むしろ待ち遠しくて気持ちがぽかぽかしてたというか……」
柔らかく微笑むシンシア。しかし、微笑みながらも、こすり合わせている手は寒さで赤くなっている。
「ぽかぽかなんて言いつつ、ほら、こんなに冷たくなって……」
タリスカーは、赤くなったシンシアの手を取って両手で包み込んだ。
「はわわっ」
(「あったかいっていうか、顔が熱いよぅ……」)
タリスカーの大きな手に包まれて、顔が真っ赤になるシンシア。
「……はい、冷たいです……だから、握っててくれていい、ですか?」
リヴァイアサンの奇跡がシンシアを後押ししてくれて、今日は少しだけ積極的になれる。
「あ……つけて下さってるんですね……つたなくてお恥ずかしいですけど……」
ふとシンシアの目にタリスカーの手首が目に入った。その手首に付けられているミサンガが。
少し照れながら、でも嬉しそうに口元を緩めた。
「これか? ありがとな。折角だから、ちょっとした願掛けしつつ付けてみたよ」
タリスカーは、自分の手首のミサンガに視線を落とし、柔らかく微笑む。
「ありがとうございます♪ 早く切れるといい……というのは変ですね」
(「どんな願いかは気になるけど……切れちゃうのはちょっと寂しい、かな」)
「確かに。じゃあ、折角だからシンシアもコレに祈りを込めてくれるかい? ――ささやかな願いが叶うように」
タリスカーとしても、シンシアが一生懸命編んでくれたものが切れてしまうのは寂しい。ならば、切れたときにシンシアの願いも叶うなら嬉しい。だから提案した。
「私のお願いですか?」
(「うーん……タリスカーさんと恋び……は、ささやかじゃないよぅ……ずっと一緒に……も同じ!」)
「……何もないってことはないだろう?」
タリスカーは、悩むシンシアに苦笑する。
「!」
(「素敵な大人の女性になれます様に!)」
シンシアは、静かに瞳を閉じるとミサンガに祈りを込める。
「ありがとな。一緒に……叶うといいな♪」
祈るシンシアに目を細めたタリスカーは、優しく微笑んだ。
「はい♪」
――ミサンガに込めた願い事。一緒に叶いますように――。