■リヴァイアサン大祭2014『甘いものの食べ歩き』
「これが……エルフヘイムのリヴァイアサン大祭か……」川が甘い蜜に変わり、それを使った料理がたくさん振舞われるというリヴァイアサン大祭――その華やぎを目の前にして、エドガーは呆然と呟く。甘党のエドガーの頬は、エドガー自身も気付かぬうちに緩んでいた。
「行くよおおおお!」
隣にいるカペラはエドガー以上にテンション高く、せっかくのお祭りなのだからと色々と食べに行く気満々である。
ショートケーキ、モンブラン、シフォンケーキにタルト――お店にはたくさんの甘いものが並んでいる。
(「いや、カペラの手前がっつくわけにも……」)
内心はカペラと食べて回りたいと思っているエドガーだったが、自制心が勝ってがっつくような真似は出来なかった。
(「大丈夫、お菓子は逃げたりしない。ゆっくり食べれば良いじゃないか」)
思い、いつもどおりの平常心でエドガーはケーキを口に運ぶ。
「うまい……」
「見た目だけじゃなくて味も! 最高だよおおおお!」
かみ締めるエドガー、シャウトするカペラ。
行動は対極だったが、お菓子の甘さと美味しさに感激しているのは一緒だった。
(「程よい甘さが染み渡る……今日はなんて素晴らしい日なんだ……」)
感激しながらもエドガーの顔はいつも通り難しげ。しかし、カペラはエドガーの表情に気遣う余裕もなく、目の前のお菓子をがつがつと食べていた。
「今度は外でも食べようねええええ!」
あっという間にケーキを平らげたカペラは素早く立ち上がり、かと思えば店の外であつあつのアップルパイを買い求めている。
「ってどうして外に……まだ! まだ食べていない甘いものがたくさんあるというのに!」
大急ぎでプリンを口に詰め込み、エドガーはカペラの後を追う。
「クレープとキャンディも買って、マシュマロを浮かべたホットココアが飲みたいなあ。――あっ! あそこのドーナツも美味しそうだよおおおお!」
走ってようやく追いついたエドガーの腕をぐいぐい引っ張り、頬についたクリームをぬぐいもせずにカペラはお菓子を買い求めてゆく。
「カペラ、焦るな。食べ物は逃げないぞ」
口では言いながらも、エドガーの目も辺りのお菓子を見てきらきらと輝いていた。
「早く早く、お祭り終わっちゃう前にぜーんぶ食べようっ!」
「わかってるって」
言い合いながら、2人のスイーツ探訪は続くのだった。