■リヴァイアサン大祭2014『特別な夜でも変わらずに』
「ずっと気になっていたんですが……」エメリーが、ふいに口を開く。
「?」
隣に座るシャオロンが、そちらに視線を向けた。
「いつも連れていらっしゃるその可愛らしいぬいぐるみ、ちょっと触らせていただいてもよろしいでしょうか……?」
その視線は、シャオロンの肩に乗っているパンダのぬいぐるみに注がれている。
「コレですか?」
シャオロンは、エメリーの視線の先、自分の肩のパンダに視線を落とした。
「いえ、可愛いものを見るとつい気になってしまい……」
「構わないアルヨ、どうぞデスネ」
少し気恥ずかしそうに苦笑するエメリーに、シャオロンは笑顔でパンダを肩から下ろし、エメリーの前にちょこんと座らせた。
最初は遠慮がちにパンダの頭を人差し指だけで撫でていたエメリーだが、今度は手のひら全体で撫でる。撫でながら、
「このような素敵な日の夜でも、いつも通りこうしてお話するのが、とても楽しく思いますよ」
今宵は柔らかい雪が舞う中、空には星霊リヴァイアサンが優雅に泳ぐリヴァイアサン大祭。
1年に1度だけある特別なこの日は、街中では各種イベントが催され、人々の楽しげな声に溢れていた。
穏やかに微笑むエメリーに、「私も楽しいアルヨ」と笑顔で返すシャオロン。
「けれど、これからは酒場でお会いするだけでなく、もっと貴方と一緒に色んな事をしてみたいと思うようになってしまいました」
エメリーは静かに続ける。
「……どうか、私のマスターになっていただけませんか?」
穏やかに、真っ直ぐシャオロンの目を見て。
「……え」
突然の言葉に、シャオロンは手に持っていたグラスを落としそうになってしまった。
「わっ……いや、私なんかで良いアル? 弱いし、使えないし、何かに秀でている訳でもないデスネ。その……本当にそれでも、私で良いんですカ?」
慌ててグラスを両手で持ち直し、どこか不安げな瞳で口を開く。
「はい。貴方がいいんです」
エメリーは、不安そうなシャオロンを安心させるように微笑む。
「それとも……私がガーディアンではお嫌ですか?」
苦笑交じりに、そう付け加えて。
「嫌だなんてっ……マスターになって欲しいと言われた事は凄く嬉しいんですヨ。ただ自分自身にあまり自信ががなかったりで、少々不安だったり戸惑ったりですネ」
シャオロンは、両手で持ったグラスに視線を落として、もごもごと呟く。
「さっきも言いましたが……一緒に色んな事をしてみたいんです。貴方のガーディアンとして」
エメリーは、シャオロンの不安を打ち消すように、穏やかに微笑んだ。
シャオロンは、グラスに落としていた視線をエメリーに向け、
「こんな私でも良いと言ってくれるなら……よろしくお願いしますアル」
「はい……こちらこそよろしくお願いいたします……マスター」