■リヴァイアサン大祭2014『星を創って、空に倣って』
空の星を辿るように雪が舞う中、明かりは星と手にしたランタンだけだった。セツナが視線を下ろせばそこには一面の銀世界があった。外は寒いのに、セツナの心には雪と共にじんわりと溶けていくような暖かさがある。
この感覚はきっと、隣にいてくれる人がいるから。
――そう思いながら、セツナはそっと声を掛ける。
「リシャ」
寒いから、と誤魔化しながら、セツナは隣を歩くリシャに手を差し伸ばす。
「セツナくん……ん」
出会った頃と変わらないセツナの照れ隠しに、リシャは微笑を浮かべた。
ここまで一緒に歩んできた2人。リシャはセツナの照れ隠しに気付いていて、気付かれていることはセツナにも分かっていた。
そっと繋がれた手と手。繋いでいない方の手にはランタンが淡く灯されている。リシャの持つ星型のランタンの光はとても綺麗で、キラキラ輝いていた。ランタンがこんなにも綺麗な輝きを持っているのは、きっと――。
(「私が、変わったから」)
思って、リシャは自身の手を包むセツナの温もりにくすりと笑みを浮かべる。セツナは自分を不器用で口下手だと言うが、リシャからすれば、それはむしろ自分の方だった。
「俺と出逢ってくれて、大切なものを教えてくれてありがとう」
白い吐息と共にセツナの声がこぼれる。リシャの耳元に寄せた囁きに、リシャはセツナの紫色の瞳を見つめた。
この広い場所で選んで、想ってもらえて――ありがとう、とセツナは続ける。
愛しているとは言わなかった。それでも精一杯の気持ちを込めた言葉だった。
「それは……こちらの台詞、だもん。セツナくんと一緒に居なかったら、ずっと、心から誰かを想う気持ちなんて知らないままだった」
出会ってくれて、愛してくれて。
この先も一緒に――と望んでくれてありがとう、とリシャは思う。
リシャは爪先立ちをして、セツナに顔を近付ける。
星だって知らないリシャの全てを籠め、セツナに口づけをするために――。