■リヴァイアサン大祭2014『白雪の灯火』
静かな暖かい書庫の中。たくさんの書物と静かに流れる穏やかな時間。いつもと違うのは、小さなツリーが飾られている点。
窓の外では、半実体化した星霊リヴァイアサンが、純白の雪とエルフヘイム各地に奇跡を降らせていた。
街はお祭りムードで賑わっているのだろうが、こんな日だからのんびりする事を選んだファルクとボリス。
「ファルクのお勧めは?」
「……そうだな、この辺か」
ボリスが聞くと、ファルクは迷う事なく書棚から数冊選んで渡した。
礼を言ったボリスは、更に興味を惹かれた画集も持って床に座る。
ファルクが勧めた本は、自分が面白いと思った本。自分ほどの読書好きではなくとも、面白いと感じてくれるだろうと。
ページをめくる紙の音だけが響く静かな書庫。
床に並んで座り、静かな、優しい時間を過ごす2人。
本の世界に入り込んでいるファルクと、時折窓の外をぼんやり眺めては、また本を読む繰り返しをするボリス。
次第に書庫の中には薄闇が広がっていた。
「日が暮れるのが随分早いな」
窓からの光しかない書庫である。窓の外が暗くなれば、書庫の中も暗くなるのは当然だ。
ふと顔を上げたファルクが、呟きながら立ち上がった。そのままランプに火を灯し、また床に戻る。
ファルクの呟きに顔を上げたボリスは、柔らかい灯りに目を向け、
「そうだね」
周囲の暗さに驚かされた。時間を忘れるほど集中していたことに。
「少し寒くなってきたか」
ファルクが再び口を開く。
――ふわり。
ボリスが口を開く前に、2人の肩に1枚の毛布がかけられた。
(「流石だなぁ」)
その気遣いが。紳士的な、レディファーストを守る騎士道精神に改めて、
「ありがとう」
ボリスが嬉しそうに微笑む。
毛布が足りなくならないようにと、ファルクに寄り添って、読んでいた本に再び視線を落とした。
(「伝えなきゃ……『今日を一緒に過ごしてくれてありがとう』って……」)
柔らかな毛布と心地よい体温に、ボリスのまぶたは重くなっていく。
ファルクが、切りのいいところまで読んで伸びをすると、肩に暖かな感触。そして、小さな寝息が聞こえた。
瞳を閉じて安心しきったボリスに、ファルクの頬が緩む。
そっとボリスの耳元に唇を近づけ、優しく囁いた。
「ハッピー・メリー・リヴァイアサン」