■リヴァイアサン大祭２０１４『「teaghlach」大切な家族』
窓の外は一面銀世界。優しく降り続く雪は、全てに雪化粧を施して――。「わ〜♪ 美味しそうですぅ♪」
そんな雪化粧された景色が良く見える窓際の席。テーブルいっぱいに並べられたご馳走に、見た目も可愛いスイーツ。
アヤはオレンジ色の瞳をキラキラ、太陽のように輝かせる。
「たくさん食べてね」
向かいの席に座るアナムが優しく微笑んだ。
「そういえばぁ、紫陽花のお菓子も美味しかったですねぇ」
アヤは満面の笑顔で楽しそうに思い出す。以前アナムと食べたアマツカグラのお菓子を。
（「アナムさんと一緒だから凄く美味しく感じたのでしたぁ」）
思い出して更にアヤの顔に幸せそうな笑顔が広がる。
「そうだね……あの時、抹茶を初めて飲んだアヤ君の顔は忘れないよ」
涙目になって「にが……ですぅ〜」と零したときの顔を。
「もぉ、そこは忘れて下さいぃ〜……」
恥ずかしさに顔を赤くしたアヤは、頬を膨らませてアナムを軽く睨んだ。
「はは、あれは可愛かったからね」
「むぅ〜」
くすくす笑うアナムに、アヤはふくれっ面でプリンを口に運ぶ。
「美味しいですぅ〜」
しかし、口の中に広がる甘くて幸せな味は、ふくれっ面を簡単に幸せそうな笑顔に変えた。
しばらく楽しくおしゃべりをしていると、ふと会話が途切れる。
「……？」
アナムがアヤを見ると、スプーンを持ったまま小さな寝息を立てていた。
「寝ちゃったかな……」
軽く苦笑して、その子供のような寝顔にアナムの頬は緩む。
「しょうがないな……」
静かに席を立つと、起こさないように、そっとアヤを背負った。近付く店員に、自分の口の前で人差し指を立てて軽くウィンク。
「ご馳走様。美味しかったよ」
アヤを起こさないように小声で微笑むと、紙幣を数枚取り出し、それを「ご馳走様」と渡す。おつりを渡そうとする店員に笑顔で無言のまま軽く手を振り、店員も声を出さずに深々とお辞儀をした。
「さて、帰ろうか……」
アヤを背負ったアナムは、彼女を起こさないよう静かに扉を潜って歩き出す。
アクエリオにある宿舎に向けて――。
