■リヴァイアサン大祭2014『今年はひとりじゃない、ね!』
ずっと、一人だった。リヴァイアサン大祭の夜は、いつも一人。けど、今年はそうじゃない。シェリミオは室内で、その事を実感していた。
マーシャも同様に、「お祭りの日に誰かと過ごせるのは久しぶりで、誰かと一緒に過ごしたい」……のだったら、嬉しいんだけど。
シェリミオの目前に居るのは、彼より三才年下で、美しい金髪と橙色の瞳を持つ美少女……マーシャ。
彼女とともにシェリミオは、料理に取り組んでいた。
暖炉の炎による暖気に当てられながら、シェリミオ……錬金術士の少年は、出来上がった料理を卓上へと運ぶ。
「わぁ……」
テーブルの上に並んだごちそうを見て、マーシャは目を輝かせた。それらはささやかではあるけれど……マーシャと一緒にシェリミオが作ったもの。香ばしいチキンの香りに、甘いチョコレートケーキの匂いとが漂い、シェリミオの鼻をくすぐった。
しかし、マーシャは少しだけ心配そうな表情を浮かべている。
「ケーキの飾り付け、どうかな? ちゃんと綺麗に出来てるといいんだけど……」
不安そうなマーシャの口調に対し、シェリミオは心からの言葉で答えた。
「とっても綺麗にできてるよ!」
二人で一緒に飾り付けしたとはいえ、贔屓目なしにその出来栄えは見事なもの。それを強調すべく、シェリミオはさらに言葉を重ねる。
「一緒に作ったから、きっと、とってもおいしいよ!」
その言葉を聞いたマーシャは、嬉しそうに微笑みを浮かべた。そして、その微笑みにつられたシェリミオの顔も緩んだ。
「……マーシャさんとは、これからも一緒に……いろんなイベント過ごしていきたいなぁって」
そして、つられてそんな事を言ってしまった自分に、シェリミオは気づいた。
「ほんと? 一緒に居たいだなんて言われたの、初めて!」
わたしも……と、マーシャも言葉を続ける。
「わたしも、シェリミオとならどんなイベントも楽しく過ごせそう。こんなふうにね!」
にっこり笑うマーシャ。そんな彼女を見てると、シェリミオは思ってしまう。……ずっと一緒にいたいと。
(「えへへ、なんでだろう?」)
マーシャの事が、気になっている。彼女の事を、もっと知りたい。彼女に、もっと近づきたい。
もっともっと、マーシャの笑顔を見たい。
この気持ち。自分がまだ知らない感情。これが何かはわからないけど、今はそれよりも……今宵に言うべき言葉を用いて、彼女に伝えたい。
「ハッピーリヴァイアサン、マーシャさん!」
「うんっ、ハッピーリヴァイアサン! シェリミオ!」
いっぱい食べて、いっぱいおしゃべりして。楽しい一日になる、きっと!
それを確信したシェリミオは、マーシャとともに笑顔を浮かべた。