■リヴァイアサン大祭2014『トレジャーハントデートの帰り道』
「離れちゃダメだからね? リグルスはすぐ迷子になっちゃうんだから」「……あぁ。折角のデートだからな」
アーズィがからかうように楽しげに口を開くと、リグルスは頷いた。注意されてるにも関わらず嬉しそうな表情で一言付け加えて。
冗談めかした軽口であったのに、リグルスの言葉にほんのり顔を赤らめるアーズィ。そう返されるとは思わなかったから。
リグルスの方向感覚が壊滅的だというのは自他共に認めるところである。
それ故にアーズィは気を配っていた。何か気になるものがあったらしく、ついて来ないリグルスの服の裾を引っ張って意識を戻させたりする。分かれ道では、袖口掴んで「こっち」と誘導したり。
「あ! スケルトン!」
アーズィの視界、遥か前方にスケルトンが歩いているのが映って思わず駆け出していた。骨好きが高じて、骨が動いているスケルトンなど大好物なのである。
「……しょうがないな」
リグルスは軽く苦笑して、走り出したアーズィを追いかけた。
しかし、進むと分かれ道。どちらを見てもアーズィの姿は見えない。
「こっちか?」
迷いつつ足を進める。しかし、進んでもアーズィの姿もスケルトンも一向に見えない。
「リグルスー!」
するとリグルスの背後からアーズィの声が響いた。
「もー、だから離れちゃダメって言ったじゃないか」
あちこちにかすり傷を負ったアーズィが駆け寄る。
「……アーズィが急に走り出すから……」
リグルスは、申し訳なさそうに「すまん」と素直に謝罪した。
「うん、私も思わず走り出しちゃったから……ごめんね」
素直に謝罪されては、からかう気にもなれないアーズィは、自分も悪かった、と苦笑する。
「で、あのスケルトンは何か持ってたか?」
「そう! そうだよ! あのスケルトン、中々良い剣を装備してて、貰ってきちゃった♪」
リグルスが問うと、アーズィは得意げな表情で、長剣をリグルスに見せた。
「刀身は刃こぼれしてるが、この鍔に埋め込まれてるのはルビーか? 確かに収穫だな」
アーズィが持つ剣をまじまじと見るリグルスが楽しそうに笑う。
「だね。そろそろ帰ろうか。帰りはドラゴンスピリットで景色を見ながら、なんてどうだい?」
「トレジャーハントデートの締めくくりは、空のデートだな」
ドラゴンスピリットでの帰還を提案したアーズィに、リグルスが楽しげに笑った。
リグルスの『デート』という言葉に、うっすら頬を染めるアーズィ。
「そ、そうだね。ほら、もう迷っちゃダメだからね」
アーズィは誤魔化すように、リグルスの手を引っ張って歩き出した。
その手をリグルスが握り返して、アーズィの耳まで赤くなったのは言うまでもない――。