■リヴァイアサン大祭2014『一番好きをあげたいから』
「真っ白で綺麗ですね」プリンが白い息を吐きながらゆっくりと歩く。
「えぇ……本当に。まさに銀世界ですね」
横をのんびり歩くクラウベルトが、辺りを見渡しながら微笑んだ。
葉を落として裸だった木々は、純白の服を纏う。公園の遊具も白く染まり、ベンチも真っ白な衣装を着込んでいた。
その銀世界を楽しみながらも、クラウベルトは何か0を探しているよう。
(「これじゃ座れないし……どうしようかな」)
クラウベルトは、自分の好物をプリンに振舞おうと、自慢の豆をブレンドしたコーヒーを水筒に入れて持っていた。
そもそも、それを思いついたのは、以前プリンと初めて――お見合いで会った時、彼女の大好物をご馳走になったからである。だから、今度は自分の好きなものをご馳走しようと。
それなのに、どこかでゆっくり座って、というのも難しそうだ。
確かに、雪化粧をした公園は、いつもと違って神秘的である。だが、ベンチにも雪化粧がされているとなると、何処に座ればいいのか。
その時、プリンが小走りにベンチに向かった。
「?」
どうしたのかとクラウベルトが注目すると、プリンはベンチの雪を払いだしたのである。
「どうしたんですか!?」
突然のプリンの行動に慌てて声を上げた。
「クルトさん、さっきからベンチ眺めてたから。疲れてる様子はなかったし……ベンチ何か気になるのかなって」
プリンが優しい眼差しで口を開く。
「あ……」
自分では、自然にベンチを見ていたつもりなのに、プリンには、気にしているように見えたらしい。
「何かあったら素直に言っていいんですよ」
2人分が座れるくらい雪を払い終わったプリンが、優しく微笑んだ。
(「初めてあった時もそうだった、自分のことを真っ直ぐ見てくれる彼女に惹かれたんだ」)
「実はですね……今日、プリンさんに是非ともおすすめしたいコーヒーを持ってきたんです。でも座る所がなくて、どうしようかと思ってたんですよ」
柔らかく微笑んで、最後は軽い苦笑を浮かべながら、ベンチを気にしていた理由を口にするクラウベルト。
「奇遇ですね、僕もクルトさんにお土産を持ってきたんです」
同じことを考えていたなんて、と笑うプリン。
2人は、雪が払われて、座れるようになったベンチに腰掛けた。
出会ってそんなに時間は経っていないけれど、これからお互いの好きな食べ物や趣味、色々な事を一緒に楽しんでいきましょう――。