■リヴァイアサン大祭2014『サンタ捕獲作戦』
「本で読んだんだ! ツリーか枕元に靴下を下げておくと、その中にプレゼント入れてくれるんだって!」瞳を輝かせたラウムが、興奮気味に口を開いた。
「朝になったらツリーの下に箱があってさ……ねえちゃんがプレゼント用意してるんだって思ってたんだ。でも、違うみたいなんだよ!」
続けて力説する。
「違うんすか?」
シゾーは、きょとん、と首を傾げた。
「このセカイには、赤い服着てプレゼントを配る神のようなジジイがいるらしいぞ!」
少し得意気に先日得た知識を披露するラウム。
「おおー、それは素敵なおじいさんもいたもんっすね!」
(「あー……それ信じている人に真実はばらせないっすね……」)
シゾーは運び屋稼業である。なのでその伝説の正体を知っている。
「今までは靴下無いから置き場に迷ってたんだな……悪い事した……」
ラウムは俯いて、申し訳なさそうに呟き、
「だからでっかいの作ろう! 夜に間に合うよーに!」
顔を上げて、ぐっと右手を握った。
「なら、どんなプレゼントも入るようなでっかーいのが必要っすね! 気合い入れて縫うっすよ、おー!」
シゾーも笑顔で握った右手の拳を高々と上げる。
2人は裁縫道具を用意して、大きな布を広げた。
「でも縫い物とかしたことねーや」
ビクビクと針を動かすラウムが呟く。横のシゾーを見ると、黙々と針を動かしていた。
「シゾー結構上手いじゃん見直した! ここどうすん……痛ぇ指刺した!」
シゾーに声をかけて気を抜いた瞬間、持っていた針で自分の指を刺してしまう。ぷくっと血がにじむ左手の親指をくわえて、むぅ、と眉をしかめた。
「ふふん、縫物は習ったっすからね、出来るんすよ……ってアイタァ! 刺した! 油断大敵っした……あ、ええと、ここはこんな感じで縫うんすよ」
得意気に鼻を鳴らすシゾーも、うっかり指を針で刺してしまい苦笑する。ラウムに聞かれた部分に目をやって、見えるように自分の靴下で縫い方をやってみせた。
わいわい2人で靴下を縫い、なんとか2つの大きな靴下が完成。
「これ、もう靴下じゃなくて寝袋だな」
出来上がった靴下を広げながらラウムが呟く。
「完全なる寝袋っすねこれ……っていうか温そうっすよね、寝てみたい」
2人が作った靴下は、プレゼントどころか、人がすっぽり入るくらいの大きさになっていたのだ。
「あっ、それ良いな、待ち伏せしてみる? ジジイに会えるかもなー!」
「よし、じゃあ待ち伏せ作戦っす!」
楽しそうに笑う2人の作戦は夜に決行される事となる。
でも――きっと寝てしまうから、プレゼントちゃんと持ってきて下さいっす!