■リヴァイアサン大祭2014『変わる想い、触れる指先』
リヴァイアサン大祭。にぎわう街並みの中を、リティアは去年と同じく買い物に訪れた。
去年同様に、来たのは2人で。……テラと一緒に、この街、この商店街に訪れていた。
「…………」
けど、去年と異なり……リティアは隣のテラと、目を合わせられない。
なぜか、胸が苦しくなる。……去年と、自分の気持ちが全然異なっている。そんな自分自身に、リティアは気づいていた。
「ああ、ちょっと寒いな。雪でも降るかな?」
他愛ない言葉をかけられ、テラは笑顔を向けてくれる。そして、いつものように歩幅を合わせて、ゆっくりと歩いてくれてもいる。
それらを意識すると、リティアは胸が締め付けられる。胸がうずき、切なさと痛みとを覚えてしまう。
(「おそらく、テラさんから見たら……私は『心ここにあらず』といった様子なのでしょうね……」)
そんな事を考えていたら、テラが立ち止った。
リティアは、テラとともに立ち止り……同じく『それ』へと視線を注いでいた。
真っ白い、そしてかわいらしい、クマのぬいぐるみ。それが露店の店先に並べられ、自分たちへ顔を向けていたのだ。
かわいい……そう思ったリティアが手を伸ばすと。
「「あっ……」」
テラも手を伸ばし、
「「あっ、あのっ……」」
その拍子に、二人の手と手が触れ合ったのを知った。
反射的に、リティアは思わず手を引っこめてしまった。
「あのっ、えと、その……」
そして、わたわたっと慌ててしまう。
不自然な行動を取ってしまった事に気づき、とたんに恥ずかしさがリティアへと襲い掛かり……頬が熱くなってしまった。
(「どうしましょう、こんなことして、テラさんに嫌われちゃったら……」)。
などと思ってしまい、顔を見ることができない。
「うっわ、この子……可愛すぎ……」
「えっ?」
何か言ったようだが、テラの言葉は聞こえなかった。ようやくテラの方を見ると、口元に手をあて、何かをこらえているかの様子。
「……なあ、その」
そして、テラの口から出たのは、意外な申し出。
「……周りも似たようなもんだし……手……つないで、みる?」
冗談交じりな口調で、そんな事を言ってきた。
きっと、冗談。
テラさんからしたら、ただの冗談で、そんな事を言い出したに違いない。
そんなことは、よく分かってる。わかってるつもり。
頭の中でリティアは、そう自分に言い聞かせた。
けど……。
こくり。
「……えっ?」
うなずくと、驚いたような、意外そうな口調のテラ。
「いい、ですか?」
そして、さらに言葉を続ける。
「お言葉に甘えても……いい、ですか?」
ただの冗談。けど、それでも……。
テラさんと手をつなげられる。手をつなぐ事ができる。それが、嬉しい。
こんな自分の狡い心を隠しつつ……おずおずと、リティアは手を差し出した。