ステータス画面

2人でリヴァイアサン大祭

黄昏の歯車・エミリオ
紺碧のシンダー・ミナリカ

■リヴァイアサン大祭2014『Resplendissamment!』

「せっかくだから、ケーキでも食うか」
 エミリオが気まぐれにそんな事を口にしたところ、ミナリカはそれににっこりとほほ笑むことで応えた。
 
 今宵はリヴァイアサン大祭。しかし、エミリオは特別行事ごとには熱心ではない。
 ではあるが、今回は祝ってもいいかな……と、そんな気分になっていた。
 かくして2人は、人でにぎわう商店街へ。
 どちらが口にするでもなく、「ケーキは手作りにしよう」と決まり、足らない食材を調達するためにと二人して出かけたのだ。
 
「ありがとうございました。メリーリヴァイアサン!」
 店員の言葉を背中に受けつつ、購入した食材を抱えた2人は、店を出た。
 商店街の通りには、今日を祝うために、買い物に勤しむ者たちがたくさん行き来していた。どこからともなく響いてくるのは、「メリーリヴァイアサン!」という、先刻の店員と同じ言葉。
 この鮮やかな風景と、楽しそうな人々の様子。見ていたら、それらに同調するかのように……エミリオもちょっぴり浮かれてしまう。
「みんな、楽しそうだよね」
 穏やかな口調と表情で、ミナリアがつぶやいた。
「ああ、そうだな」
 わざとぶっきらぼうに聞こえるように、エミリオは相槌を打つ。そうでもしないと、自分の浮かれ気分がばれてしまいそうだった。
「腹が減った。早く帰ってケーキ作って食おうぜ」
 照れくささを覚えつつ、エミリオはミナリアに促した。

「エミー、凄い、美味しそう……」
 ミナリアの言葉に、エミリオは得意げにうなずいた。
「美味いに決まってんだろ? 俺たちが作ったんだからよ!」
 居間の食卓上に鎮座するは、シンプルだがうまそうな苺のショートケーキ。帰宅した二人が作り上げたそれは、なかなかのできばえだった。
「さ、食おうぜ。……おっと、お前にもな」
 エミリオは、ケーキを切り分け、小皿に乗せ差し出した。自分に、ミナリカに、そして自分の妖精ナナに。
「ありがとう」
 受け取ったエミリオは、フォークでそれを一口。
「……おいしい」
「うん、うまい」
 そして、エミリオも一口。口の中に甘さが広がり、まるで心もとろける気分。
 ケーキをじっくり味わいつつ、互いに無言で食べていたが。
「……エミー、ねえ」
「ん?」
「……クリーム、付いてるよ?」
 自分の頬を指さしながら、ミナリカが指摘した。
「ん? ああ」
 だが、エミリオはそれを自分で取らず、首を傾げて差し出すようにした。そのまま、何かを期待しているかのように、動きを止める。
「?……お、俺が、取るの?」
 戸惑うミナリカへ、エミリオはにやっと悪戯っぽく笑ってみせる。
「くっくっく……あっはっはっは!」
 ミナリカの頬が、恥ずかしそうに赤く染まる。それを見て、こらえきれなくなり……エミリオは思わず笑い出してしまった。
 2人の様子に気づくことなく、妖精のナナはケーキに夢中。

 今宵はリヴァイアサン大祭。ここにもまた……甘く暖かい空間が生まれていた。
イラストレーター名:みき冬麻