■リヴァイアサン大祭2014『貴方といる幸せ』
レイラは、『暖かさ』を感じていた。外で降っている雪の事を忘れてしまう、居間の暖炉からの『暖かさ』。
目前にあるテーブルにて、湯気を立てているコーヒーの『暖かさ』。
腰を下ろしている、やわらかなソファの『暖かさ』。
そして……今、彼女の腕の中にある人の、肌から伝わる『暖かさ』。
レイラの傍らには、ティルナ……藍色の髪の眼鏡の美女が、くつろいだ様子でおだやかな表情を浮かべている。レイラはそんなティルナの横から……愛しい女性の事を抱きしめ、彼女の肩に頭を乗せ甘えていた。
「こらこら、重いわよ」
笑いながら、ティルナが言葉をかけてくる。
「だって、あったかいんですもん」
甘えた口調で、レイラはティルナにそのまま頬ずり。動くたびに、柔らかな薄紫の髪がふわりと舞った。
「もー、しょうがないわねえ」
言葉と裏腹に、嬉しそうな口調のティルナ。目前のコーヒーは冷め、皿に乗ったお茶菓子も数が減っていない。
ティルナはそれでも、レイラの髪を撫で続け、微笑みを返してくる。それがレイラにとって、とても嬉しい、すごく嬉しい。
こうやって、のんびりとした時間を過ごせるのは久しぶりの事。この一年、色々と忙しく、色々なことが起こったが……それでも、ティルナと一緒に一年を過ごす事ができた。
今こうやって感じている『暖かさ』……ティルナの肌の暖かさだけでなく、一緒にいるだけで感じられる暖かい気持ち。愛しい人を想う『暖かさ』。
来年も……また共に、一緒に過ごし、一緒に歩めるように……。
心地よい『暖かさ』の中で、ぼんやりとそんな事を考えていたレイラは、
「……ねえ」
ティルナに声をかけられ、我に返った。
「今年も、一年お疲れ様。大変な時期もあったけど……今は、とても幸せよ」
「幸せ?」
「ええ。今こうして、一緒にいる事ができて……とても幸せ」
ティルナの言葉に、レイラも言葉を返す。
「私も……幸せです」
もっと言葉を連ねたかったが、なぜか胸がいっぱいになって、それ以上の言葉が出てこない。
でも、この言葉だけで十分。なぜなら、ティルナはレイラの言葉を聞いて、嬉しそうに微笑んでいるのを見たから。
「来年も、よろしくね」
「はい、こちらこそ……末永くよろしくお願いします」
互いに、互いを想う二人の女性。
暖炉の焚火から投げかける光が、二人の影を壁に映し出す。
見つめ合う二人の影が、徐々に近づき、一つになり……そのまま溶け合う。
レイラはティルナから、更なる『暖かさ』を受けた。そして彼女もまた、ティルナへと『暖かさ』を与える。
愛しい気持ちを伝えるために、より幸せになってほしいために、二人はいつまでも……互いが与え合う『暖かさ』の中を漂い続けていた。