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2人でリヴァイアサン大祭

氷中に眠る硝子猫・アズリア
硝子猫を守りし雪狼・イゼルド

■リヴァイアサン大祭2014『今だけは…』

 静かな夜。
 ソファでくつろぐアズリア。そのソファの後ろに直立不動で控える従者が1人。
「今日くらいはお前もゆっくりしろ」
 アズリアは、ティーカップを口元から離しながら、背後の男――イゼルドに声をかけた。
「お断りします」
 イゼルドは即答する。主の前で気を抜くなど言語道断だと。
 2人の顔立ちは瓜二つだ。しかし、領主と従者で正反対の立場。赤の他人でも似た顔という事もあるが、2人には血の繋がりがある。それどころか、同じ日に生まれた双子なのだ。
 アズリアと同じ扱いを受けてもおかしくない彼は、とにかくアズリアと対等な立場になる事を嫌がる。
(「どうしてそこまで嫌がるのか……」)
「わかった、なら膝枕をしろ。これは命令だ」
 軽くため息を吐いたアズリアは、はっきり命じた。「今日は聖夜だからな」と小さく付け加えて。
「い、いや、しかし……そのような恐れ多い……」
 主に膝枕するなど、それでは何かあったら動けない。主を守る事ができない。それに、主とそんなに近づくなど。そう拒否をするイゼルド。
「命令だと言ったのが聞こえなかったか?」
 アズリアは、ぴしゃりと言い放って、軽く睨む。
「はぁ……命令ならば仕方ありません……今日だけですよ」
 ため息を吐いたイゼルドは、アズリアの隣に座った。そして、自分の太ももを軽く払ってアズリアを迎える準備を完了する。
「……」
 アズリアは無言のまま――つまり、今日だけだと言われた事に頷かぬまま、倒れるようにしてイゼルドの太ももに頭を乗せる。そのまま足をソファの上に乗せ、完全に体をソファの上に横たえた。
「力を抜け。枕が硬くて寝心地が悪い」
「はい……。申し訳御座いません」
 上目遣いで睨むアズリアに素直に謝罪するイゼルド。力を抜いたのを後頭部で感じたアズリアは満足そうに瞳を閉じた。
(「やれやれ……本当に今日だけの特別ですからね……」)
 聖夜だから特別、そう割り切ったイゼルドは、瞳を閉じる主をなんとなしに眺める。
 無音の優しい時間が部屋を包んでいた。少しすると、無音の部屋に小さな寝息が混ざる。とても気持ち良さそうな寝息。
 普段見る事のないアズリアの寝顔。こんなに気持ち良さそうに、安らかに眠るのか、と物珍しそうに眺めていまう。その手は自然とアズリアの頭を優しく撫でていた。
(「……これが幸せというものでしょうか」)
 イゼルドの瞳には優しく穏やかな色が浮かぶ。
 寝息を立てるアズリアの口元は幸せそうな形を作った。

 ――今だけは……。
イラストレーター名:蒼那