■リヴァイアサン大祭2014『雪とわんこと迷いの森』
「ナヅキさん、わんこがいます〜」黄色いリボンに飾られた白いブーツが、これまた真っ白な雪を踏む。
犬を見つけたレフィはナヅキにそう言いながら、犬へとまっすぐに駆け寄っていく。犬はやって来たレフィに驚いたのか、レフィから逃げようとしている。
(「あの犬も災難だな……」)
レフィを見失わないように追いながら、ナヅキは思う。レフィは犬が好きだが、どういうわけか犬には好かれないのだ。レフィが迷子にならないよう、ナヅキはぶらぶらとレフィの後を追って歩いた。
森へと逃げ込んだ犬を追って、レフィとナヅキも森へと足を踏み入れる。
犬好きなレフィはどこまでも犬を追うが、犬はレフィから逃げ回っていた。森の中にある大きな岩の周りで追いかけっこをするレフィと犬――ナヅキは岩の上にひょいと腰掛け、その様子を眺めることにした。
「……なんか目の前に人参ぶら下げられた馬みたいだな?」
ぐるぐると回り続けるレフィの姿から連想して、ナヅキは赤い瞳を細めて笑う。
どれだけそうしていただろう。レフィがようやく犬を捕まえる頃には、彼女の頭の上には雪が積もってしまっていた。ナヅキは岩の上から立ち上がり、レフィの元へと歩み寄った。
ナヅキはレフィの頭に手を伸ばし、積もった雪を払ってやる。
「ほら、腹も空いたしそろそろ帰るぞ」
レフィの手を取り、ナヅキは言う。
「そろそろ帰るんです?」
不思議そうにナヅキを見上げるレフィだったが、ナヅキに手を引かれるとにっこりと笑顔になり、隣を歩き始めた。
「帰りに、おねぇさまへのお土産に何か狩って行っても良いでしょうか?」
冬とはいえ、森には色々な生き物がいる。「鹿とか捌いてみたかったんです♪」とうきうきしながらレフィは言い、ナヅキが行こうとしている方向とは別方向へと歩きだしていた。
「ったく。帰るのはもうちょい後になりそうだな」
肩をすくめ、ナヅキはそう独りごちる。
――でも、こうして振り回されるのも嫌いではない。
森の中に入って行った時と同じく、ナヅキはレフィの後をついて行く。
雪の森を散策するうち、のんびりと夜は更けていった。