■リヴァイアサン大祭2014『篝火』
エルフヘイムの街中は、年に1度のリヴァイアサン大祭でお祭り騒ぎ。賑やかな声と笑顔が溢れているが、街から少し離れれば声は全く届かない。マーサーとエシラは、ちょっとした冒険気分で鬱蒼とした森を探索していた。
そんな折、土に埋もれた石橋を発見する。なんだろう、と沿って歩いてみると、コケとツタにまみれた古城が建っていた。
「ァー、しかし、こんなところにこんな建物があるとはねェ」
マーサーが少しだけ目を開いて目の前の建物を見上げる。
「何だか、おとぎばなしに出て来る悪の親玉が住んでる城みたいだなッ!」
エシラは、わくわくと胸を高鳴らせて口を開いた。
「とりあえず入ってみようかァ」
「うん!」
マーサーが提案すると、エシラは即答で賛成する。
中に入って、少し歩いてみると――。
ガシャン!
「!?」
「危ない!!」
エシラの頭上からギロチンが降って来たのだ。間一髪のところでマーサーが強く腕を引き、その凶刃から逃れる事ができた。
ほっとしながら、また探検を再開する。少しうろうろしていると、今度は地響きが聞こえてきた。その音はだんだん近付いてくる。
「今度は石か!」
大きな石が階段の上から転がってきたのだ。
2人でその石から逃れ、最上階付近でバルコニーがある事に気付く。窓の外はすっかり茜色の空が広がっていた。
「朝になったらまたうろうろしようかー。暗いと危ないしねェ」
屋内では何時どんなトラップが発動するか分からない。2人はバルコニーに出て、篝火を炊くことにする。
「やァ、ギロチンがね、落っこちて来た時は間一髪で危なかったわねェ。ヒヤッとしたわ! 石が転がって来るなンてベタなトラップもあったしねー」
命の危険を味わっておきながら、エシラは楽しそうにカラカラ笑った。
「本当に色々あったねェ……エシラ、寒くないかい?」
ふいに冷たい風が走りぬけ、マーサーが口を開く。
「さーむーいーッ!」
その言葉にエシラは、やや大袈裟にマーサーの腕にしがみつき、肩に頭を埋めた。
「今日も結構歩いたし、遠慮なく寝ちゃってイイからねー」
優しく頭をぽむぽむと撫でて、「火の番はしておくわよー」と付け加える。
エシラは、優しく大きな手に顔を上げると、口の横にチュッと軽くキスをした。
「って、おおう。全く、いたずらっ子なんだから……」
マーサーは、突如口の横に感じた柔らかい感触に、驚き目を見開くと、苦笑を浮かべる。
「ふふ……おやすみなさい」
イタズラが成功した子供のような笑みを広げたエシラは、そのままマーサーの肩に寄りかかって瞳を閉じた。
「ん、おやすみねェ」