■リヴァイアサン大祭2014『52days to …』
(「シュルスくん、どこにいるのかなー……」)大勢の人で賑わうエルフヘイムの街を、メイはきょろきょろしながら移動していた。
捜し求めている相手、シュルスの姿はなかなか見つからない。12月24日――今日はリヴァイアサン大祭。だからこそ、メイは彼と一緒に過ごしたいのに。
「あっ……雪」
ふと視界にちらちらと入ってきた白いものをみて、メイは思わず足を止めた。見上げれば、いつの間にか空を舞う星霊リヴァイアサンの方から、はらはらと雪が降り出している。
雪は好き。だけど1人で眺めていてもつまらない。
「……シュルスくんと一緒に見たいなー」
2人で街をただ歩くだけでも、彼となら絶対楽しいに決まっている。バザールに立ち寄って甘いお菓子や温かい飲み物を買ったり、リヴァイアサンの丘まで足を伸ばすのもいいだろう。シュルスはメイみたいに、こういう時はしゃぐようなタイプではないけれど、あの口元に、ちょっとだけ楽しそうな笑みを浮かべて、メイの方を見てくれる姿が容易に想像できた。
「あ」
早くシュルスを探さなくちゃと、再び辺りを見回して……メイは、向こうに黒ずくめの男が歩いているのを見つける。後姿だけで顔なんてわからない。でも、その背格好だけでメイにはわかる。
「シュルスくん!」
駆け出したメイは、人混みをかき分けて彼の名前を呼ぶ。
見失ったらどうしよう。見失う前に、シュルスを捕まえなければ――!
全力疾走しながらなんとか距離を詰め、メイがシュルスの腕を掴むと、ようやく彼は振り返った。
「メイ?」
「や、やっと、ついた、よー……」
見つけた、追いついた、捕まえた。
すっかり息が上がってしまったメイは、何度も呼吸を繰り返しながらも、がっちり掴んだシュルスの袖を決して離さない。
胸がばくばくする。これだけ走ったのだから無理も無い。だが、この早鐘を打つ鼓動の理由は、きっとそれだけじゃない。
何からどう、彼に伝えよう?
悩んで、ただそうシュルスを見上げるだけになってしまったメイを見て、逆にシュルスの方が口を開いた。
「ずっと追いかけてたのか? 悪い、気付かなかった。……とりあえず、そこの店にでも入るか」
すっかり息が上がっているメイを思いやっての事だろう。周囲に目をやり、シュルスが見つけたのは1軒のカフェ。窓際の席からは雪が舞う空がよく見えそうで――席はちょうど空いている。
「うん! あのね、あたしケーキが食べたいなー」
メイは満面の笑みで頷き返す。しょうがないなと頷いて、好きなものを奢ってくれるというシュルスと席につき、メイは窓の外を見る。
年に一度のリヴァイアサン大祭。でもまだ今日が終わるまで、時間はたっぷりある。
このあとシュルスと一緒に、どう過ごそうか――。
せっかくお店に入ったのだから、ケーキを食べながらそれを相談してみるのも楽しそうだ。胸を躍らせながら、メイはシュルスを見つめて、幸せそうに微笑んだ。