■リヴァイアサン大祭2014『お酒初体験 〜一緒だったから美味しく飲めました♪〜』
年に一度のリヴァイアサン大祭の日。大いに賑わうハニーバザールの一角にあるテーブルの一つに、シンシアとタリスカーの姿があった。
会話の切れ間、ふとタリスカーが切り出したのは、初めての酒を一緒に飲むという約束。
「俺の好きなレシピでね」
慣れた手付きで、まずタリスカーはウィスキーをグラスに注いだ。それから芳醇なウィスキーの中へとろりとした蜂蜜を加え、お湯を割り入れる。最後にシナモンスティックで全体を良く混ぜると、強い酒の香りが少し薄れ、残ったのは蜂蜜とシナモンの風味。
「召し上がれ♪」
完成、と出来上がったグラスはシンシアの目の前へ。
礼を告げ、シンシアは温かなグラスを両手で持ち上げる。
「「乾杯♪」」
こくり、と。小さくグラスを傾けたシンシアは、初めての酒の味にはにかむように笑った。
「あ、美味しいです♪」
「良かった。俺も今日から楽しみが1つ増えたよ」
タリスカーも安心したように微笑む。
最初は少しずつ飲んでいた酒にも徐々に慣れてきて、シンシアの体も温まっていく。気が付けば、グラスも空になっていた。
「また今度、一緒に飲みましょうね」
そうしてタリスカーの顔を見た瞬間、急にシンシアの心臓がドキドキと高鳴った。
(「もしかしてこれが酔うという事?」)
初めての経験に不安な表情を浮かべる彼女の変化に、タリスカーは目敏く気づいた。
「どれどれ?」
大きな手がシンシアの頬に伸びてきて、触れた。
「……はぅ」
ドキドキが、更に。不安な顔のまま、頬を包む掌に手を重ねる。
近い距離。潤んだ彼女の瞳が上目遣いでタリスカーを見つめていて――。
「……今日はもう遅いね。送るから戻ろうか」
気恥ずかしさからか、タリスカーはシンシアから離れると、ゆっくりと腰を上げた。
「帰りましょう、か……あれ?」
名残惜しくも、続けて椅子から立ち上がったシンシアの体が急に揺らいだ。が、
「おっと」
崩れ落ちる前に、タリスカーが彼女の肩を支えた。それから申し訳なさそうに眉を寄せる。初めての酒を屋外で勧めてしまって悪かった、と。
「なんなら、おんぶして送ろう」
「そ、それは恥ずかしいです……嬉しいですけど」
小声で付け加えられたシンシアの本音は、彼に届いたかはわからない。
だが、誰も周りなど気にしていないから大丈夫、と笑う。
「何かあったら困るからね。きちんと送らせて欲しいから」
言われ、シンシアは少し悩んだようだった。そしてしばしの後、小さく口を開いた。
「……お願いします」
「今日は本当にありがとな」
タリスカーに背負われたまま、シンシアはこちらこそ、と感謝を告げる。
「とても楽しくて嬉しい時間を過ごせました」
初めてのお酒も一緒だったから、楽しく飲めた。
……忘れられない、大切な想い出です。自然とシンシアの口元に寂しさが浮かぶ。
けれど、やがて押し寄せる心地良さに包まれて。
(「何か……眠い……」)
そっと、瞼を下ろした。