■リヴァイアサン大祭2014『フラムとミミのリヴァイアサン大祭』
まるで、世の中には自分たち2人だけがいるかのよう。ミミが夫・フラムとともに、その人気のない、小高い丘に登ると。
「わぁ〜……」
空には星空、そして舞い踊るリヴァイアサン。丘の下に見えるのは、祭りの灯り。それらを形容するのに、ミミが口にする言葉は、ただ一つ。
「……綺麗〜!」
そんな彼女の横で、フラムは一緒に星空を見上げている。
フラム。ミミの夫、年下の夫、天警騎士の夫。
今宵、ミミをここに連れてきてくれたのは、フラム。祭りの全体が見渡せるようにと、高い高いこの場所へと案内してくれた。
その宝石のような、星と町の輝きに魅せられていたミミだが、
「……くしゅんっ」
寒さの前に、くしゃみを。
「入る?」
フラムが、自分のコートの前を開き、誘う。夫の暖かな懐の中に、ミミは入り込んだ。
「あたたかい……♪」
冷えた体が、フラムに抱きかかえられ……暖まっていく。
先刻まで、雪と冬の冷気とでかじかむ手と指先も……フラムと手をつなぎ、指先を絡め合う事で、暖かさがさらに染み入ってくるよう。
「……ミミ」
暖かさに包まれていたら、フラムが問いかけてきた。
「エルフヘイムでは、この日に大切は人と過ごして、平和を祈るんだろ?」
「え? ……う、うん」
その問いかけに、若干の戸惑いを覚えつつ、ミミはうなずいた。
「……来年も、再来年も、ずっとこうして……一緒に過ごそう」
「………」
こくん。今度は、声を出さずにうなずくだけで、ミミはフラムの言葉に答える。
「……来年は……もう1人くらい、家族が増えていてもいいかもしれないね」
え?
「…………」
その言葉の意味を悟ったミミは……『ぽしゅん』と音が出そうなほどに、頬が熱くなるのを実感した。
恥ずかしくて、そわそわとしてしまう。落着きなく、視線をあちこちに向けるが……。
笑みが、浮かぶ。嬉しくて、愛しくて、とろけるような笑みが、浮かんでしまう。
フラム、ミミにとって、誰よりも愛しい人。
結婚して、まだ一月。
けれど、ずっと……幸せでいられるって思う。そう思える。だから……。
この気持ちを、伝えたい。たくさん、伝えたい。
「フラム、さん……」
口にできたのは、彼の名前。
「……ずっと……一緒だよ」
そして、口に出せた気持ちは、その短い言葉。
けれど、それ以上は必要ない。
なぜなら、フラムもまた、ミミを見つめながら、優しく微笑みを浮かべているから。
その眼差しに見つめられながら、ミミは目を閉じ……フラムのくちびるに、そっとくちづけした。
お互いに、優しく、強く、抱き合う二人。
フラムとくちづけを交わすミミは、
(「ずっと、一緒だ……」)
声には出ておらずとも、心で聞いた。フラムからのささやきを。
リヴァイアサンの祝福の輝きの下、愛し合う2人は……いつまでも抱き合っていた。