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2人でリヴァイアサン大祭

戦うメイドさん・ヴィクトリア
煉朱・カイン

■リヴァイアサン大祭2014『聖夜は戦場にて〜悪虎討ちの絆〜』

「本日の依頼も無事終えられて何よりです」
 敵がいなくなった事を確認したヴィクトリアがモップを体の横に立てた。
「……ふぅ」
(「肩を並べ戦うのが当たり前になったのは何時からだったか」)
 一息ついたヴィクトリアを横目に、カインも武器を下ろし、ふいに思う。
 2人は依頼でしか顔を合わせた事がない。プライベートで会って、何処かに遊びに行くという間柄ではないのだ。
「……それにしても、お互い知り合ってこれで何度目の依頼でしょうか」
 ヴィクトリアが静かに口を開く。彼女もまたカインと同じ事を考えていたらしい。
 周りを見渡す余裕ができた2人の視界に、ちらちらと雪が舞っているのが映った。
「月日が経つのは早いですね」
 今年も年に1度のこの日。カインに知り合って何度この日があったか。
「本当に早いものだ」
 カインも、本当に感慨深く息を吐く。
「アクスヘイムで虎を討って、アマツカグラ、マギラント、ラッドシティ、ワームパイプ・ホロウに、ランスブルグ……色んな所へ行って、共に戦って……」
 ぽつ、ぽつ、と今まで共にした戦場を思い返しながら呟くヴィクトリア。
 共に歩み、敵を退け、命の危機にも晒された2人。
(「その時に私を救う為駆けてくれたヴィクトリアには、どれ程感謝をしても足りぬ。今も私がこうして居られるのは、彼女のお陰だ」)
 ヴィクトリアの言葉に思い返すカインは、深く感謝の念を抱く。
「考えてみれば依頼でしか顔を合わせた記憶がないのに、随分とお互いに気心知れている気がします」
 ふふ、と軽く笑うヴィクトリアの瞳には、カインに対する信頼が宿っていた。
「依頼での縁がこうも長く続くとは、誰が予想出来ただろう」
(「背中を預けられる無二の人であり、大切な友。貴女を信じ、貴女の為に命を燃やそう」)
 カインも軽く笑顔を浮かべながら呟く。呟きながらも、心に固く誓って。
 その時、雪を纏う冷たい風が、ぴゅう、と2人の間を通り抜けた。
「冷えてきましたね」
「……ああ、今日はよく冷える」
 その風にヴィクトリアが笑顔を絶やさぬまま呟き、カインも白い息を吐く。
「ふふっ……さ、風邪を引く前に帰りましょうか」
「帰ろうか」
 ヴィクトリアは、にこっと笑い、カインも笑顔で頷いた。
「……これからも、宜しくお願いしますねカインさん」
「今後も頼りにしているよ、ヴィクトリア」
 戦場でしか顔を合わせない――戦友で親友。
 次に会う約束なんて要らない。きっと依頼を受けて戦場に赴けば居るから。
 それだけ深い絆で繋がった2人は、戦場から日常へと帰っていった。
イラストレーター名:アトヒル