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2人でリヴァイアサン大祭

闇狼・ヴォルフ
闇紡ぎ・アルテミシア

■リヴァイアサン大祭2014『juratio〜明日も未来も〜』

 リヴァイアサン大祭で街は賑わいを見せる。
 まだ朝だというのに賑やかな町並みを歩き、ヴォルフはラッドシティ、時の玉座へと向かった。
 ――歳の重ね方をエルフと同じようにするために。
 ヴォルフの婚約者であるアルテミシアはかつて、家族や恋人を殺された。そんなアルテミシアは、口にこそ出さないもののヴォルフにもエルフと同じ歳の重ね方をして欲しいと願っていた。
 アルテミシアの口には出さない本音を、ヴォルフは知っていた。それでも今までは自身の考えやさまざまな事情のために時の玉座へ赴くことはしなかった。
 でも、今年は――。
 思って、ヴォルフは時の玉座へと足を踏み入れる。

 エルフヘイムにある廃村、その中の廃墟にアルテミシアはいた。
 かつて故郷だったこの廃村の、幼少期はよく通っていたここに立ち、祈りを捧げること。それは毎年のアルテミシアの慣習だった。
 この場所でヴォルフとの待ち合わせをしていたが、その時間はまだ先のこと。アルテミシアは白い服を身に纏い、一人で静かに祈っていた。
 廃墟となったせいで建物はあちこちが壊れていて、壁に開いた穴などからは雪が舞い込んでくる。それでもアルテミシアは祈りをやめず、しん、と静かに瞳を閉ざしていた。
「――アルテミシア」
 名を呼ばれたアルテミシアが向けば、そこにはヴォルフの姿がある。ああ、とアルテミシアは笑みをこぼし、建物のヒビの入っていない床を選んで座った。
 アルテミシアの姿に安心したような微笑を浮かべ、ヴォルフはアルテミシアの膝の上に頭をもたせかける。そっとアルテミシアの手がヴォルフの頭の上に乗って、ヴォルフの頭を撫で始める。
 ヴォルフは目を閉じ、気取られないように深呼吸する。
「アルテミシア」
「どうしましたか?」
 問うアルテミシアの声はいつも通り。いつもと変わらない様子のアルテミシアに、ヴォルフは静かに口を開く。
 ――時の玉座に行ってきたと、そう告げるために。
イラストレーター名:十田悠