■リヴァイアサン大祭2014『白き祝福』
「シバ君も着物姿なのがちょっと新鮮ね」リヴァイアサン大祭の夜、アヤエは温泉に足だけ浸かってそんなことを言う。
「たまにはこういうのも悪くはないですね」
アヤエ同様、いつもよりも少し落ち着いたデザインの着物を纏ったシバは言った。雪がちらついて少し冷えるが、足湯のためか、あるいはアヤエと共にいるためか、身体の芯はぽかぽかと温かい。
「――こういうのを用意したんですよ」
二人きりで過ごすリヴァイアサン大祭は初めてだから――言いつつシバは赤い簪を取り出し、アヤエに見せる。
「素敵ね」
「つけてあげますね」
言ってシバがアヤエの黒髪に触れると、アヤエは嬉しそうに口元をほころばせる。自分の髪に触れ、似合うかと問いたげな瞳に、シバは微笑みを返した。
「私からはこれを」
ふわり、シバの首元を温かいものが包む。それはシバの瞳にも似た青色のマフラー。編み目の感じからすると、おそらくアヤエの手編みなのだろう。
互いのプレゼントを身に着け、二人は見つめ合う。そのままシバは手元の酒に手を向けたが、その動きはアヤエに制される。
「私が」
反射的に言って、アヤエは酒の入ったとっくりに手を添える。
「ありがとうございます」
驚きは一瞬、しかしすぐに喜びに変わり、シバはにっこりと笑って答えた。シバの盃が、アヤエによって満たされていく。
「これからもずっと一緒にこうして過ごせると嬉しいわ」
シバに酒を注いだ後は自分の盃にも注いで雪見酒を楽しみながら、アヤエは呟く。
のんびりとした二人きりの時間。アヤエはシバの顔を覗き込んで、更に続ける。
「私、前よりは照れ屋じゃなくなったのよ?」
「良い傾向ですね、アヤエ」
アヤエの言葉に、シバは思わず耳元で囁きかける。すると、アヤエの頬はたちまち赤く染まった。
「……って、言ってる傍から照れちゃうじゃない」
照れてうつむくアヤエに微笑みかけ、シバは空を見上げる。
ちらちらと舞い降りる雪が、二人の夜を彩っていた。