■リヴァイアサン大祭2014『君と。』
「せっかくの大祭だ。偶には外に行かないか?」あまり2人で過ごすという事のない大切な――レギリアスの口からそんな言葉が出る。
「うん」
コーラルは笑顔で頷いた。
(「レギルと出掛けるのなんて凄く久しぶりだ」)
心を躍らせて、柔らかな雪が舞う外の世界を2人で歩く。
街は様々なこの日にしか出店しない珍しい店があったり、楽しげな人々の笑顔が溢れていた。
丁度ベンチが目に付き、「少し休憩しようか」と2人で並んで腰掛ける。
目に映る人々は皆楽しそうで、思いきり大祭の雰囲気を満喫しているようだ。
(「そういえば……あの時は申し訳ない事をしたな……」)
コーラルの頭に浮かぶのは、初めて共に過ごしたこの日。
何処にも出掛けずに、レギリアスがコーラルの部屋の掃除を手伝ってくれたのである。しかも、レギリアスは疲れてそのまま眠ってしまった。
「……綺麗だな」
後悔に暗くなりかけたコーラルの耳に、レギリアスの声が届く。
ちらりと隣を見ると、空を見上げて表情を柔らかくしているレギリアスの横顔が目に入った。
辺りは随分暗くなり、空には星が輝きだしている。優しく降り続く雪は、まるで星が降ってきているようだ。
「うん……」
(「今日はあの時と違うんだ……1日中隣に立って、歩いて、喋って、笑って。凄く楽しくて、心から幸せで……」)
コーラルも空を見上げながら、今日1日のことを思い返し、自然と表情が柔らかくなる。
「……レギル」
(「……同じ事を思ってくれてるかな……思ってくれてるといいな……」)
そっと名を呼んで寄り添うと、行き場のない手を静かに重ねた。気持ちが重なるように。
「僕、今すっごく幸せなんだ」
(「レギルも、幸せ?」)
続く言葉は声には出さず。
不安を聞くより、幸せを確かめたい。
大好きな君と過ごす今を、抱きしめたい。噛み締めたい。
そんなコーラルの想いが届いたのか、レギリアスは重なる手をぎゅっと握り、
「俺もだ」
体を寄り添わせて静かに微笑んだ。
コーラルの望んでいた、欲しかった言葉。他の誰でもない、レギリアスの口から聞きたかった気持ち。
「ずっと、一緒にいようね」
コーラルは、今日1番の笑顔を広げた。