■リヴァイアサン大祭2014『帰る場所』
二人だけで、お祝いしようか。そう言って高台に誘ったのは、どちらからだったか。
気が付いたらリデルは、レセルヴァータとともにそこにいた。
「うわあ……!」
レセルヴァータが、歓声をあげた。
「すごいね」
感嘆しつつ、リデルもまた相槌を打つ。
二人の目前には、宝石箱をひっくり返したかのような、星々の瞬き。
「空気が、澄んでいるからかな。いつもよりたくさん……星が見える気がする」
レセルヴァータの言う通り。冬晴れの夜空に輝いている星々は、いつも以上に美しく見えた。
「最近、星を見る暇もなかったからね。何かとバタバタしてたし」
そう呟き……リデルは、視線を星空から、レセルヴァータへと向けなおした。
「危ない事は、しなかった?」
「え?」
聞き返すレセルヴァータが、リデルへと視線を向ける。
「レセル。危ない事は、しなかった?」
その質問に、目前の少年は、華奢で繊細な印象を与える狩猟者の少年は、わずかに頬を膨らませた。
「それは、こっちのセリフ。大怪我して帰ってきたのは誰だった?」
心配、したんだからね。その言葉を付け加えたレセルヴァータに対して、リゼルは小さく肩をすくめる。
「ちゃんと帰ってきたよ」
「当たり前です」
「……ごめん」
その謝罪の言葉とともに、リデルは見た。レセルヴァータの顔に、笑顔が戻るのを。
二人で一緒に居ると、まるで姉弟のようだと言われる。リデルが姉で、目前のレセルヴァータが弟だと。
だが、守護者たるリデルは、毎回の負傷は気にしない。……そんな事に、気を裂くつもりはない。
いや、そんな事よりも……もっと怖い事がある。自分の大切な人。その人たちが、傷つき、悲しむ事。自分が受ける痛みより、そちらの方がずっと怖い。
そんな事をぼんやり思っていたら……レセルヴァータは、リデルの瞳へと視線を向けていた。
そこには、笑顔はない。
あるのは、心配そうな表情。どこかで見たような、その表情。見たのは、どこだったか……。
そうだ、レセルヴァータを心配していた時に、鏡に映った自分の顔。それに似ていたのだ。
大切な人が傷ついた時、心配で、怖くて、悲しくて……。その時に浮かべていた、自分の表情。それにそっくりだった。
リデルよりも身長が低いレセルヴァータは、リデルの青色の瞳を、見上げるようにして覗き込む。
リデルもまた、レセルヴァータの薄茶色の瞳を、見下ろすようにして覗き込む。
レセルヴァータの瞳に、自分の姿が映っているのをリデルは見た。おそらく、レセルヴァータも彼女の瞳に、自身の姿が映っているのを見ているのだろう。
「次も、その次も……」
沈黙の中、互いに互いを見つめ合う中。
「……ちゃんと、帰ってきて」
レセルヴァータの、真剣な言葉、真摯な言葉に、リデルは一瞬息をのみ。
そして、うなずいた。
「約束、する」
君の元に、戻ってくるよ。
その言葉とともに、今度はリゼルから、笑顔を向けた。