■リヴァイアサン大祭2014『Prosit !!』
「今日も一日お疲れ!」「お疲れ様」
路地裏に2つの声が響く。
ジョッキの口とカップの口をぶつけ合い、
「……ぷは! あー、一日の終わりに飲む酒は美味え!」
ジョッキをぐいっと煽ったジグが満面の笑顔を広げた。
いつも通りギガンティアの探索をし、かつて、ねぐらとしていた路地裏に戻ってきたジグとセラ。
「このクソ寒いのにビールなんてよく飲めますね」
そんな男を見て、セラはホットミルクを舐めるのように飲んだ。
いつも通りの1日。でも、今日はちょっとだけ豪華なご馳走が広がる。
ちらちらと雪が舞い、空には星霊リヴァイアサンが優雅に泳ぐ、そんな特別な日だから。
「なあなあセラ、今日の俺の活躍見てくれた? 敵の巧妙な罠にはまり、バルバの群れに囲まれるも愛用の得物を振るい窮地を脱する俺!」
ジグはジョッキをテーブル――代わりにしている木箱の上に置き、今は装備していないバトルガントレットを装備してるつもりで両腕を振るう。得意気な顔を広げて。
「――巧妙な罠? ラミアにフラフラついて行った貴方が、気付いたらバルバに囲まれていた時の話?」
カップを両手で持って手を温めながら、冷静に淡々と口を開くセラ。「窮地を救ったのは私じゃない」と軽く溜め息を吐きながら。
「えっ、そうだったっけ? まぁ細かいことはいいじゃねえか!」
ジグは、へらっと笑って、誤魔化すようにジョッキをぐいっと煽った。
皿に乗ったピザを一切れ摘み、
「セラも冷めない内に食いな」
話題を切り替えるように笑うと、ピザを口に運ぶ。
「それでは……」
セラもピザを一切れ摘まんで、口の中にチーズとソースの味を広げた。
ピザを一口食べて一度小皿に置くと、今度はパンに手を伸ばす。そして、小さく千切ったパン屑を足元に撒いた。路地を徘徊する鼠達へのお裾分けである。
「チキンもジュースも好きなだけ……」
ジグは得意気な顔で続け、木箱に並べられたご馳走を見て気付く。
「あ、しまったケーキ買いそびれたな……俺としたことがついうっかり」
少し渋い顔をした。
セラは、『ケーキを買いそびれた』という一言に一瞬寂しそうな表情を浮かべる。
「……ならば明日にでも」
(「……あ」)
ぼそっと言った後に内心舌打ち。
「明日も俺とデートしてくれるの? いやいや大歓迎よ! ケーキ一つでキミの時間を買えるなら安いもんさ」
ジグが瞳を輝かせた。セラとしてはそんなつもりはなかったのだが、結果そうなってしまった事への舌打ちだったのである。
「……二つ」
1本取られたようで悔しくなったセラは、負け惜しみのように吐き捨てた。
ジグがケーキを買いそびれたのは、本当にうっかりだったのか、それとも先に繋げる口実だったのか――。