■リヴァイアサン大祭2014『二人だけのお散歩』
夕から夜へと移り変わる空の下を、メリーナとルシックは二人きりで歩いていた。「寒いですね……」
「そうですね……温かい飲み物が欲しくなります」
繋いだ手だけは温かいが、寒さはあった。寒そうに首を縮こまらせるメリーナを見て、ルシックは自分のマフラーをメリーナにかけてやることにした。
「こうすれば、あったかいですよ。メリーナさん、どうですか?」
ルシックは首を傾げて問いかける。まだルシックの体温の残るマフラーに顎を埋め、メリーナはルシックに笑いかけた。
「……はい、あったかいです。ありがとうございます、ルシックさん」
森の中を散策するうちに、雪だるまや雪うさぎが二人の目に入った。「私達も作りましょうか」とメリーナが提案すると、「良いですね」とルシックも頷いた。
二人が作ることにしたのは大きな雪だるま。雪玉を転がして大きくして、二段に重ねる。顔や飾りは辺りに落ちた木の枝や木の葉を使った。
「それと、これも」
言い、ルシックは胸元につけていた薔薇の飾りを雪だるまの胸に飾る。完成した雪だるまを見てメリーナが笑顔になると、滅多に笑わないルシックも微笑んだ。うふふ、と声を出して笑うルシック――しかし、次の瞬間には悲しそうな顔を浮かべる。
「春になると溶けちゃうんですよね、雪だるま……」
今は冬。しかしいずれ春が来て、気温が上がれば雪だるまは溶けてしまい、永遠に残すことは出来ない――悲しそうな表情でうつむくルシックに、メリーナは優しく声をかける。
「私達の心の中にはずっと残ってますよ。ルシックさんと作った雪だるま、私、絶対に忘れませんから」
「……そうですね。私も、ずっと覚えています」
穏やかな表情に変わったルシックの言葉に、メリーナは安心したように笑いかけた。
再び手をつなぎ、二人は森を進んでいく。
「ねえ、メリーナさん?」
「どうしましたか?」
「来年も雪だるま、一緒に作りましょうね」
「ええ、一緒に。……楽しみです」