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2人でリヴァイアサン大祭

赤錆の鬣・ジグ
冰霄・セラ

■リヴァイアサン大祭2014『Prosit !!』

 大祭の日でも、過ごし方は普段と同じ。
 ギガンティアの探索から戻った2人は、気が付くと自然と、ジグの店がある路地裏に向かっていた。
 路地裏の片隅。暗く、お世辞にも居心地の良い場所とは言えないその一角。
 そこにジグとセラは座り込み、酒や飲み物、ピザやチキンなど食べ物を広げ、ささやかな宴を開いていた。
 食べ物の匂いにつられたのか、鼠や猫、犬など、この界隈を歩き回る小さな動物たちが遠巻きに見ている。ジグはそれに気づかない様子で、ジョッキにビールを注ぎ始めた。

「……あー、美味え!」
 ジョッキを煽り、ジグはひといきにビールを飲み干した。
「やれやれ」と、セラ……ジグの目前に座る、繊細な雰囲気の少女が、呆れ気味にそれを横目で見ている。
「よくビールなんて飲めますね。こんなに糞寒いというのに」
 彼女が手にしているマグカップの中には、湯気の立つホットミルク。
「何言ってるんだ。一日の終わりに飲む酒ほど、美味え酒はねえんだぜ!」
 などとジグは呵呵大笑し、瓶からジョッキへと、おかわりのビールを注いだ。
「なあなあセラ、そういや見てくれたか? 俺の活躍!」
 そんな調子でジョッキを何度か空にしたジグは、得意げにセラへと語りかけた。
「活躍? なんでしたっけ」
「あっただろ? 敵の巧妙にして卑劣な罠に嵌り、バルバの群れに囲まれるも、愛用の得物を振るい窮地を脱する俺……」
「巧妙にして卑劣な罠〜?」
 セラのジト目が、自分に容赦なく向けられてくるのをジグは見た。
「ラミアにふらふら付いて行った貴方が、気づいたらバルバに囲まれていた時の話じゃあないんですか?」
「え? そうだったっけ?」
「そうです。それだけじゃあなく、その窮地を救ったのは私じゃないですか」
「まぁ、細かい事はいいじゃあねぇか!」
 細かくないですよ……と、つぶやいたセラの言葉など聞かず、ジグは目前のピザを一切れ取ると、それに食いつく。
「セラも冷めないうちに食いな」
「では、遠慮なく」
 と、セラもピザをもぐもぐ。
「チキンも、ジュースも好きなだけ……」
 そこまで言って、ジグは気づいてしまった。
「しまった……ケーキ買いそびれたな。俺としたことが」
 彼のその言葉に、セラは一瞬だけ、寂しげな顔を浮かべた。しかし、それを隠すかのように、ピザの縁部分をちぎっては、路地裏のネズミにやるために足元に撒いている。
「……ならば、明日も」
 セラがつぶやいたその言葉。それを聞いたジグは、にかっと笑った。
「明日も、俺とデートしてくれるの?」
 その言葉に、ジグは見た。
 セラの「しまった」というような表情を。そして、ちょっと悔しげな、けれどちょっと嬉しそうな表情を。
「いやいや、大歓迎よ。ケーキ一つでキミの時間が買えるなら、安いもんさ」
 さらに追い打ちをかけたジグは、
「……ふたつ、で」
 負け惜しみのような言葉を、セラが呟くのを聞いた。
イラストレーター名:れんこ