■リヴァイアサン大祭2014『The Seventh Bright Day』
――ふわり。この1年に1度の特別な日にだけ咲き誇る氷の桜。その氷の花弁が風に舞う――。
「思えば……ただずっと、ずっとその背中を追いかけて、追いかけ続けて……この目はあなたのことだけを見続けていたのかもしれませんね」
ぽそり、リーゼロッテが口を開く。
「……あの雨の日に出会った、今にも壊れそうな表情をしていた少女……気づけば、こんなにも立派な、僕の生涯の『主』となっていた」
サーシスは、すっと片膝を折って、リーゼロッテの足元にひざまづいた。
(「ずっと、あなたの傍にいたいと思ったから……隣でなくとも、あなたの姿を見守っていたいと思ったから……」)
自分が金の指輪を送ると、銀の指輪をくれたマスター。誰よりも守りたい人。
「……あの雨の日に出会った、どこか諦めた表情をしていた男は……気づけば、こんなにも大切な、私の生涯の騎士になっていました」
師であり、目標であり、家族であり――大切な人。
静かに言葉を紡ぐリーゼロッテは、すっとサーシスの眼前に手を差し出す。
「騎士の誓いだなんて、立派なものは知りません」
それでも、サーシスはリーゼロッテの手をうやうやしく取り、頭を垂れた。
「形式だなんて、いいじゃないですか」
頭を垂れるサーシスをじっと見つめ、
(「旅立ったあの日にはこんな日が来るなんて思いもしなかった」)
故郷の桜に似た大木の下、リーゼロッテの頬を雫が伝う。
(「嬉しい時にも、出るのは本当なんですね……」)
頬を伝う感触に、しみじみと感じる。胸に宿る幸福な温もりを。
「どうか、顔を挙げてください」
静かに、柔らかく頭を垂れる騎士の頭に声を降らせた。
(「顔を上げたら、きっと、あなたは……」)
涙の気配を感じ取っていたサーシスは、少しだけ地面を見つめたまま。それでも、顔を上げると、リーゼロッテの頬に光る筋を目にする。
静かに立ち上がり、
「その輝きを拭うのは、勿体ないような気もします、ね」
軽い苦笑を混ぜながら、主の頬を拭った。