■リヴァイアサン大祭2014『永遠の森』
「雪なのよ♪」大空を泳ぐリヴァイアサンが起こす雪が降り注ぐリヴァイアサン大祭――ミラは、この日が一番好きだった。
長い髪を揺らしながら歩くミラ。ミラの希望で外に出てきたフェルディナントにとっても、美しい雪とその下を嬉しそうに歩くミラを眺めるのは決して悪い気持ちではなかった。
室内とは違い、森の中は寒い。ほころんだ表情のミラだったが、その鼻先は僅かに赤らみ、雪に触れる指先もかじかんでいるようだった。
「大丈夫ですか?」
ミラの少し後ろを歩いていたフェルディナントはミラの隣に並び、ミラの華奢な肩に上着をかけてやる。上着にはまだフェルディナントの体温がわずかに残っていて、ほのかに温かい。
「平気よ。私、この時が一番大好きなの!」
心配するフェルディナントに、ミラは笑顔で答えた。
とはいえ少しばかり寒くもあったのか、ミラはフェルディナントがかけてくれた上着ごと自分の肩を抱く。かすかにフェルディナントの香りが漂って、ミラはフェルディナントを見上げて笑顔を向けた。
「でも、ありがとうっ」
言って、ミラは再び歩きだす。フェルディナントは、その横をついて歩いた。
踊るような足取りのミラ――しかし、ふと足を止めると、隣を歩くフェルディナントの手を取った。
「フェル、とっても綺麗ね♪」
「えぇ」
雲のない夜空、舞うリヴァイアサン、降り積もる雪――そして隣に立つ大切な人。
そのどれもが美しい、とフェルディナントは笑顔で頷いた。
フェルディナントは隣に立つミラの体を引き寄せ、雪の降る中で舞うリヴァイアサンを見上げた。リヴァイアサンは優雅に、そして穏やかに暗い空を舞い続けている。
(「出来ることなら――」)
思いながら、フェルディナントは隣にいるミラを思う。目線は空に、それでもミラの体温は確かにフェルディナントに伝わっている。
――来年も、再来年も一緒にいられますように。
願いを込めて、フェルディナントは夜空を見つめていた。